2017.06.26
DVD「来てけつかるべき新世界」好評発売中!
2017.02.28
上田誠「来てけつかるべき新世界」が第61回岸田國士戯曲賞を受賞しました。
2016.11.5
全日程終了いたしました。14,000人以上の方にご覧いただきました。たくさんのご来場、ありがとうございます。
2017.06.26
DVD「来てけつかるべき新世界」好評発売中!
2017.02.28
上田誠「来てけつかるべき新世界」が第61回岸田國士戯曲賞を受賞しました。
2016.11.5
全日程終了いたしました。14,000人以上の方にご覧いただきました。たくさんのご来場、ありがとうございます。
自分の中から強烈な獣の匂いがしたので、大阪のおっさんの劇をやりたいと思いました。
大阪は近いようで遠くて、深いところを触ってみたいなと。
とりわけ「新世界」という街にはひどく憧れがありました。レトロフューチャーそのままの名前と街の感じに。
ジャンジャン横丁には将棋サロンがありましてね、近くにはゲームセンターがあって、
そこにも将棋ゲームがやっぱりあっておっさん天国だったりして。
そんな新世界を舞台にSFを夢想しました。
シンギュラリティのその先を描いた、二つの意味で今回は「新世界コメディ」です。
おっさんがドローンと戦ったり、ロボットアームに王手飛車取りを迫られたり、ホログラフィの娘と言い合いしたり、
そういう来たるべき、来くさるべき、来てけつかるべき新世界を描けたらと思います。
作・演出=上田誠 音楽=キセル
出演=石田剛太 酒井善史 角田貴志 諏訪雅 土佐和成
中川晴樹 永野宗典 西村直子 本多力
/金丸慎太郎 藤谷理子 福田転球
美術:長田佳代子 照明:葛西健一 音響:宮田充規 衣装:清川敦子 ヘアメイク:松村妙子
映像:大見康裕 演出助手:山田翠・大歳倫弘 舞台監督:筒井昭善×大鹿展明
演出部=大槻めぐみ・磯村令子・杉浦訓大・相澤伶美
運送=植松ライン(西村晴美・大野亨・谷山正明・三瓶裕次郎) 大道具=俳優座劇場舞台美術部(大橋哲雄)
アートディレクション=堀口努 宣伝写真=有本真紀 宣伝映像=山口淳太
制作= 井神拓也・諏訪雅・本多力・吉田和睦 WEB=宇高早紀子
協力:よしもとクリエイティブ・エージェンシー カクバリズム
京都芸術センター制作支援事業
2016/9/3(土) 15:00 (開場は開演の30分前)
前売[一般]2,000円 [学生]1,500円/当日[一般]2,500円 [学生]1,800円 (全席指定・未就学児入場不可)
主催= 栗東芸術文化会館さきら/ヨーロッパ企画/オポス 後援=栗東市/栗東市教育委員会
制作協力=サウンドクリエーター 助成=文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
問=栗東芸術文化会館さきら 077-551-1455(9:00~22:00月曜休館・祝日は開館)
9/8(木)19:00
9/9(金)19:00
9/10(土)13:00・18:00★
9/11(日)13:00 (開場は開演の30分前)
★は出演者による「おまけトークショー」あり
前売3,500円/当日4,000円 (全席指定・未就学児入場不可)
学生シート(前売のみ)2,000円 (入場時要学生証提示)
主催=ヨーロッパ企画/オポス 協力=京都府立文化芸術会館 制作協力=サウンドクリエーター
助成=文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
問=サウンドクリエーター 06-6357-4400(平日12:00~18:00)
9/16(金)19:00◎
9/17(土)13:00・18:00★
9/18(日)13:00
9/19(月祝)13:00・18:00★
9/20(火)休演日
9/21(水)19:00★
9/22(木祝)13:00★・18:00★
9/23(金)19:00★
9/24(土)13:00・18:00★
9/25(日)13:00 (開場は開演の30分前)
◎東京公演初日はスペシャルイベント「新世界おみやげコンテスト+大抽選会」あり
★は出演者による「おまけトークショー」あり
前売4,500円/当日5,000円 (全席指定・未就学児入場不可)
学生シート(前売のみ)3,000円 (入場時要学生証提示)
主催=ニッポン放送/ヨーロッパ企画/オポス 制作協力=サンライズプロモーション東京/ゴーチ・ブラザーズ
問=サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00~18:00)
9/29(木)19:00 (開場は開演の30分前)
前売4,500円/当日5,000円 (全席指定・未就学児入場不可)
学生シート(前売のみ)3,000円 (入場時要学生証提示)
主催=TSSテレビ新広島/(公財)広島市文化財団 アステールプラザ/ヨーロッパ企画/オポス
平成28年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
問=TSS事業部 082-253-1010(平日10:00~18:00)
10/1(土)13:00・18:00★ ♪福岡公演初日(10/1 13:00)はスペシャルイベントあり!
10/2(日)13:00 (開場は開演の30分前)
★は出演者による「おまけトークショー」あり
前売4,500円/当日5,000円 (全席指定・未就学児入場不可)
学生シート(前売のみ)3,000円 (入場時要学生証提示)
主催=TNCテレビ西日本/ヨーロッパ企画/オポス 提携=西鉄ホール 後援=LOVE FM 制作協力=スリーオクロック
平成28年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
問=スリーオクロック 092-732-1688(平日10:00~18:30)
10/5(水)19:00 ♪大阪公演初日(10/5)はスペシャルイベントあり!
10/6(木)14:00★・19:00★
10/7(金)19:00★
10/8(土)13:00・18:00★
10/9(日)13:00
10/10(月祝)13:00・18:00★
10/11(火)19:00 (開場は開演の30分前)
★は出演者による「おまけトークショー」あり
※10/6(木)はビデオ撮影のため、客席にカメラが入ります。
前売4,500円/当日5,000円 (全席指定・未就学児入場不可)
学生シート(前売のみ)3,000円 (入場時要学生証提示)
主催=MBS/ヨーロッパ企画/オポス 後援=FM802/FM COCOLO 制作協力=サウンドクリエーター
問=サウンドクリエーター 06-6357-4400(平日12:00~18:00)
10/15(土)14:00 (開場は開演の30分前)
前売 [一般]3,000円 [学生]1,500円
当日 [一般]3,300円 [学生]1,600円
よんドラ3公演通し券 [一般]8,500円 [学生]4,200円(ヨーロッパ企画初日10/15[土]まで数量限定発売)
(全席指定・学生シートは入場時要学生証提示) ※3歳以上からご入場いただけます。
主催=(公財)四日市市文化まちづくり財団
問=四日市市文化会館 059-354-4501(9:00~19:00) www.yonbun.com
10/21(金)19:00 (開場は開演の30分前)
前売4,000円/当日4,500円 (全席指定・未就学児入場不可)
学生シート(前売のみ)2,000円 (入場時要学生証提示)
主催=高知県立県民文化ホール/RKC高知放送/ヨーロッパ企画/オポス
平成28年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
問=高知県立県民文化ホール 088-824-5321(9:00~17:00)
角田貴志のイラストによる「新世界はん」のレターセット。
「新世界はん成金ver.」と「新世界はんロボットver.」の
2種類の便箋に封筒とパーツシールがセットになっています。
パーツシールは、便箋の絵柄に貼ってお楽しみください。
九州発のステーショナリーメーカー
HIGHTIDEとのコラボ商品です。
角田貴志のイラストによる「新世界はん」と
ヨーロッパ企画ロゴマークのあめちゃん。
5個入りです。
※画像はイメージです。
まさに吉本新喜劇ならぬ【ヨロ企新喜劇】! 通天閣を臨む串カツ屋の店先で、大阪弁のおっさんたちがどうでもいい会話をしてるという、コテコテの新喜劇的シチュエーションから始まったかと思うと、そこに配達用ドローンだとか野良化したロボットだとか、近未来的な話題がナチュラルにぶっこまれてくる。大阪・新世界というレトロな町に、未来(フューチャー)のアイテムが次々にやって来る様を描く、ある意味ほんまもんの「レトロ・フューチャー」なコメディだ。
物語全体は、串カツ屋を取り巻く人々が織りなすいくつかのエピソードを、連続ドラマ形式で語っていくスタイル。おっさん連中が最新ガジェットの数々に戸惑ったり反発したりするのを尻目に、社会のハイテク化は急速に進んでいき、その結果予想外の悲喜劇が次々に生まれていく。
舞台美術的な仕掛けではなく、会話と演技と伏線の積み重ねで笑いを増幅させていく語り口は、ヨーロッパの本公演では久々だ。というか、SF的な話題で変な盛り上がり方をするおっさん連中は、あの『サマータイムマシン・ブルース』のSF研究会の大学生たちの未来の姿のようにも見えた。
随所で大きな笑いが起こるだけでなく、舞台に向かってツッコミの声を漏らす客も出現するなど、観客の反応も今までにないほど熱を帯びていたプレビュー公演。ここから本公演に向けて、最近の人工知能さながらに飛躍的に進化した“新世界”が現れることを期待したい。
文:吉永美和子 舞台写真:清水俊洋
──ヨーロッパ企画で新喜劇的なコメディがやりたかったというのは、何か原体験みたいなことがあるんですか?
吉本新喜劇はもちろん関西の子供としては憧れて見てましたし、ヨーロッパ企画自体がもともと「ご町内モノ人情劇」みたいな芝居は得意なはずなんですよ。昔は『サマータイムマシン・ブルース』みたいに、日常的な状況の中でワチャワチャとか、そういうのをやってましたから。ただ普通に新喜劇のようなことを目指しても本家にはもちろん及ばないので、そこをどうヨーロッパ企画ならではの別物のところへ持っていくかと。あと、自分たちとズレがある劇…たとえば『月とスイートスポット』みたいなヤクザものって、僕らとは遠い世界だから、逆に「どうやってアプローチしようか」と近づいていく過程が面白いんです。でも今回みたいな日常的なシチュエーションでのコメディは、ある種僕らにとっては王道のパターンだなとも思っていて、なので逆に得意技を封印みたいな感じで、最近はあんまりやってませんでした。上手くやれて当たり前、もしこれが上手く行かなかったら今後の活動が…という怖さもあって(笑)。
──劇団の基盤が危うくなると。でも企画性コメディを始めた当初は「『サマー…』のような会話劇がなつかしい」なんて声も聞かれましたが、もしそればかりやってたら、それしかできない劇団になってたかもしれないですよね。
そうですね。「企画性コメディ」シリーズで、企画性に特化した劇をやるということを5年ぐらいやって、劇団の方向性としても、お客さんの期待としても、ある程度チャレンジブルな方へ向いてきたなという感じがあって。じゃあそこに、また具体的なシチュエーションや物語を付けていこうかなと。「企画性コメディ」って骨組みっぽいというか、コンセプトを際立たせるために、あまり余計なことを入れてなかったんですよ。昔は「面白かったらいいか」と思っていろいろ思いついた要素を入れてましたけど、だんだんそれがノイズに思えてきて、メインのコンセプトに貢献していない要素やエピソードは省くようになっていって。でもおかげで、インナーマッスルがちゃんと付いてきたんで(笑)、そろそろここらでもうちょっと、いろんなお楽しみを肉付けしていこうと思えるようになりました。
──とはいえ今回は「ハイテクノロジーVSおっさん」というのが、一つの企画性といえば企画性ですよね。
そうそう、企画性の骨組みはもちろん残していて。生身の役者がドローンやロボットと芝居をするというのが、今回の企画性。大阪の…特に新世界にいるおっさんって、割とそういう新しいものに対してアンチなイメージがあるから、そことテクノロジーをぶつけることによって、すんなりとはいかず、何か悶着が生まれそうだなと。それがコメディになるだろうし、浪花節とテクノロジーとの掛け算で新しい情緒のようなものが生まれるんじゃないかと思いました。それがたまたま「新世界」という二重の意味をもつ言葉で結びついた感じですね。あと僕は、前回公演の『遊星ブンボーグの接近』あたりから、「遠近」とか「スケール感」を意識しつつ話を作るようになっていて。カメラにたとえると、昔は「引き」の固定で、大きな水槽を観察するような感じで劇を作っていたけど、『遊星…』では文房具を拡大するという、ミクロなところへクローズするような方法でやってみたんです。そうすると自然と、台詞の方も些末というか…。
──細かい話が扱えるようになった?
そうそうそう。ホッチキスの針の曲がり方の話って、「寄り」のカメラじゃないとできないじゃないですか? そういう部分を、とくに大きい劇場になってからはあまり描いてなかったけど、「拡大」によってそれが描けるようになったら、もっとできることが増えるなあと。今回のモチーフの「新世界」も、そういうやり方で描いてみたいと思いました。『遊星…』のようにあからさまに拡大するわけではないですが、マクロを描きつつ、ミクロも描いてみようと。新世界って、空間的に「遠景」と「近景」がシームレスにつながってる街というイメージが僕にはあるんです。大阪の空があって、通天閣があって、街があって、店があって、皿の上に乗ってる料理があってというのが、全部空間としてひとつながりになっている感じ。いる人にしても、地面に座ってるおっちゃんのすぐ横を観光客が通ってたりと、いろんな空間が区切られずに同居しているなあと。そういう空間性を描きたい。遠近両方にちゃんとスポットを当てるというか…「宇宙」から「ソースに沈んだ将棋の駒」までを平等な視点で描く、という劇がやりたかった。長田佳代子さんの舞台美術がまさにそれを実現してくれました。奥にはマクロな遠景があって、手前にはミクロな空間性があるという。だから「人間と機械が一緒に芝居をする」というのに加えて「マクロとミクロを同時に描く」というのも、実は今回のもう一つの企画性です。
──今回の稽古のエチュードで、特に重視していたのは何ですか?
企画性コメディ的なことでいうと「この人とこの機械が掛け算になった時に面白くなる」ということです。たとえば石田(剛太)君は将棋が好きだから、人工知能と将棋対決をする人にしようとか。おっさんたちがどんどんテクノロジーとぶつかって融合していく、という中で、どの人とどの機械の取り合わせがいいか? みたいなことを考えてました。
──1つの長い物語ではなく、5つのエピソードを連続ドラマみたいな形で見せる構成は、ヨーロッパ企画では珍しかったですね。
あの語り口にしたのは、まず『じゃりン子チエ』のイメージがあったから。『じゃりン子チエ』が好きなんですね(笑)。あとは新世界って、いろんな話や人間が寄り集まってできている街というイメージがあったので、小さなエピソードを一個ずつ積んでいく形で語っていこうと。それでエピソードのタネとなるアイディアをとにかく書き出して、(エチュードで)話がちゃんと膨らんだものを採用していきました。あとは(音楽を担当する)キセルさんが、先手を売って歌謡曲っぽい歌を作ってくださったのも助けになったんです。その曲は結局使わなかったんですけど…最初の打ち合わせの時に、音楽をただ主題歌的に使うよりも、『遊星…』の時のように、なるべく劇と有機的に絡めたいんです、ということをお話したら「じゃあ、この世界で流行ってる歌謡曲みたいなのを作ってみましょうか」となって。まだストーリーが出来てないのにいきなりハイブロウな未来の歌謡曲みたいなのが送られてきた(笑)。で、もうちょっと演歌っぽくしましょうか、と話して、だったらそれが一番から五番まであって、それを全部(章の)タイトルにしようというアイディアが出てきたんです。開演前にその曲が流れるんですけど、あの歌詞はすべて物語に密接に関わってるので、もしこれから劇場で見られるなら注意して聴いてください(笑)。
──初参加の福田転球さんと藤谷理子さんは、ご一緒していかがでしたか?
「大阪の劇を、転球さんとやる」というのがそもそもの思いつきの発端でした。ので、転球さんが何はともあれ面白くなった方がいいので、転球さんにどう生き生き芝居をしてもらうかというのが、常に念頭に置いていたことでしたね。ヨーロッパ企画はパスワークで見せていくような芝居だけど、転球さんはワンマンショーが面白いから、メインで話が進行するところとはちょっとズレた、動きやすい位置でのびやかに演じてもらってます(笑)。理子ちゃんはもう誰よりしっかりしているので主人公的なポジションをお願いしたんですけど、みんなに混ざって楽しくワイワイとはしにくい位置で、しかもナレーションで話を引っ張るとか、大変な所を任せてしまったかなあと。でも理子ちゃんって声がちょっとケミカルだから、それがドキドキしていいんですよ。「この子は機械の方へ行ってしまうのか、踏みとどまるのかどっちだろう?」って、どちらに向かうのかわからない危うさがあって、作っていてもスリリングでした(笑)。
──実在の場所を舞台にしたことで、何か今までと違う効果とかはありましたか?
さっき言った「些末なことを描く」時に、街の力を借りることができたというのはあるかもしれないです。ここに新世界があって、西成があって、飛田があってという「地理」が具体的にあることで、その場所にはこういう人が住んでいそうだから…と、細かく話をイメージすることができたので。架空の空間だと、やっぱり人物が記号的になるんですよ。たとえば『ビルのゲーツ』だったら「実は登場人物の○○はうどん好きで…」なんて話は入りようがないけど、この芝居なら登場人物の過去の話とか「別にどうでもいいな」という情報も入れやすいし、それによってリアリティ…というか、手触り感が出るなあと。できるだけミクロなところまで描くという時に、具体的な場所から物語を作ることができたのは、すごく良かったと思います。
──ではこれから、この作品を見に行こうと思っている方々にメッセージを。
まだ関西以外で公演をやってないので(この取材があったのは京都公演終了後)、関西じゃないエリアでこの芝居がどう受け入れられるのかがわからないという、いつもの公演にはない悩みが出てきています(笑)。確かにローカル色は強いけど、新世界や関西を知らないとわからない話ではないと思うし、旅行気分で見てもらえたらと思いますね。こういう実際の街や時空間をベースにした、ローカル…というより「局所的空間」を活かした劇を、しばらく続けてみようかなと考えているので、その第一弾をぜひ観に来てもらえたらと思います。
インタビュー:吉永美和子
──人情喜劇というふれこみの世界でしたけど、『ブレードランナー』も意識したというだけあって、最後は意外とディストピアっぽい話になっていましたね。
新世界がテクノロジーに侵食されていくというのは、作る前から「絶対そういう流れになる」と思ってましたから、そうなっていく過程をエンターテインメントとして、どんだけアホらしく描けるかが課題だったんです。人情話だと思って安心して見ているうちに、気がついたら舞台上に機械をまとった人たちが増えてきて「あれ?」となる、というような。おっさんたちは最初機械に抵抗するけど、いろんな物語をきっかけにそれを受け入れはじめて「いい話だなあ」と笑っているうちに、いつの間にかディストピアにまた一歩、また一歩近づいてる…という感じにしようと思っていました。「地獄への道は善意で敷き詰められている」じゃないけど、ディストピアへの道は人情で舗装されている、かのように。
──以前「串カツ屋から物語は生まれないんじゃないかと思ったけど、やってみて正解だった」と言ってましたが、どこにそれを感じましたか?
串カツ屋って、料理の話はあまりできないと思ったんですよ。ラーメン屋なら「秘伝のスープが…」みたいな物語ができそうだけど、串カツ屋ってそういうのがあんまりなさそうで(笑)。とはいえ串カツ屋ならではの物語がどこかしらに潜んでるだろうという予感はありました。そうしたらある本に、串カツ屋の「ソース二度漬け禁止」というのは、お客さんのソースをたっぷり漬けたい贅沢感と、お店側のソースをあまり捨てたくないというもったいなさの間を取って、大きな容器でソースを共有するようになったのが始まりだと書いてあって。「二度漬け禁止」というルールの背景にはちゃんとそういう物語があるし、大阪という街のエートスも含まれているんだなと。そこから二度漬けが何となく許容されている串カツ屋があって、それをドローンが盗撮してネットで炎上して…というのが浮かんできて「あ、串カツ屋でも劇が作れそうだ」と(笑)。やっぱり串カツ屋で良かったと思いましたね。
──串カツ屋だけでなく、周りの店とか何気なく捨てられたゴミとかも、後からちゃんとドラマに絡んでくるのが面白かったですね。
いやこれ実は、美術の長田(佳代子)さんが、僕が言う前からコインランドリーとパーマ屋は配置してくれてたんです。最初に串カツ屋があって、その周りの店をどうしようかなあと考えていた時に、長田さんが仮模型を作ってくださって「どう?」って。それが何かすごく絶妙で、良さそうな舞台になる予感がしたんですよ。それはもう、直感としか言いようがないんですけど。
──じゃあロボットが盗電しやすいからコインランドリーをとか、パーマ用の大きなドライヤーでVRを見せるアイディアが出たからパーマ屋を作った、というわけじゃなく…。
全部長田さんの美術が先です(笑)。それに合わせて話を考えたんです。一応、なんとなく上手(舞台正面右側)の奥から未来が来る話にしようというイメージはあって、一番機械っぽくない串カツ屋を下手の手前に置いてください、とはお願いしました。するとたまたまなのか狙ってなのか、機械っぽいゲーセンやコインランドリーが、ちゃんと上手に配置してあって。こういうのって長田さんも肌感覚なのかな。特に串カツ屋とコインランドリーの向かいあいがむちゃくちゃ絶妙にはまって見えたので、もうこれで話を考えようと思ったんです。
──「人情喜劇からディストピアに」という狙いは、エチュードでも割とその通りに動いていったんでしょうか?
今回はそうでしたね、特に。テクノロジーの進歩って「必ずやってくるもの」で、「遅かれ早かれ受け入れないといけないもの」であり、なおかつ「絶対に逆戻りはしないもの」なんですって。たとえば車が世の中に入ってきた時に、多分それに反対した人も、逆に待ち望んだ人もいただろうけど、今はもう車がなくてはならない社会になり、そして絶対に「車がない社会」へは戻っていかないと思うんです。車に代わるさらに便利なテクノロジーが開発されることはあっても。そんな風に、いくら抵抗しても社会の進化は誰も避けられないし、そして元の社会には戻れなくなるのならば、いつ、どんな態度でそれを受け入れるのがいいのか…というのが、結構この話のポイントでした。
──実際にエチュードをやってみても、結局はみんな受け入れていったと。
そうですね。転球さんも「最初はロボットが憎たらしいと思っても、やっぱり愛着がわいてきた」と言ってましたし。でもテクノロジーを受け入れる仕方はやっぱり人それぞれだったし、それは単純に流行に乗りやすい/乗りにくいとはまた違うんですよね。このテクノロジーは受け入れられても、これにはなんとなく抵抗がある、とかは個人個人の感覚でしょうし。そういうのはなんとなく役に反映させてますね。たとえば中川(晴樹)さんって、硬派っぽく見えるけど、一度SNSを始めたら誰よりもこまめに更新するようなところがあって。なので今回は、何かとすぐにデジタルに飛びつく役にしてます(笑)。
──この人は意外と抵抗するなあ、みたいなことはあったんですか?
最初は若い2人…特にマナツちゃん(藤谷理子)が、割と率先して機械を取り入れる、という風に書いてたんですけど、話が進むにつれて逆になったんですよ。結局はおっさんたちの方が機械に取り込まれていって「ちょっと待ちぃや。それやってええことなん?」というブレーキをかけるのが、マナツちゃんとキンジ(金丸慎太郎)の方に。普通はねえ、何か…。
──若者がテクノロジーをすぐ受け入れて、年寄りがそれをいさめると思いますよね。
そうそう。それが紋切り型なんですけど…特に最後の方になって、自然とそれが逆転する流れになっていきました。なんでかな? と思ったんですけど、ある本を読んでたら「人類の進化がどんどん早くなって、最終的に人間の意識が機械と融合して全知全能になる」という未来予想図は、一人の若者がどんどん老成して死に近づいていくという変化の図と似ている、と書いてあったんです。人間って、若い頃は人とぶつかったりするけど、大人になるに連れて周りと調和してあまり動じなくなって天寿を全うする。それと同じように、人類も最初はすぐ戦争を起こしていたのが、だんだん協調するようになってきて…という。人間の一生の歩みと人類の歩みが似ているという、このアナロジーを知った時に「あ、そうか!」と。この劇ってテクノロジーによって老成していくおっさんたちと、「俺らはまだそっちに行かへんぞ」と抵抗する若者という構図になっていて、つまりこれって青春の話なんだなと思ったんです。こうなったのって多分、理子ちゃんと金丸の性質にもよるんですけど。
──ハイテクをあっさり享受する、という性格ではなかったと。
勝手に僕がそう思っただけかもしれませんが、ある野性味があったんですね。足回りがしっかりしてそうというか。最初は、マナツちゃんがテクノ(酒井善史)と結婚しておっさんたちが取り残されて、語り部も途中で変わるという展開にしようかなあとも思ってたんですよ。でも実際にやってみたら、キンジと2人で旧世界に残った方がいいなと。でもこの「残る」という感じって、今までも僕の劇でよくやってるから、また残るのかあ…って(笑)。
──でもあの残り方は寂しさよりも前向きさがあったので、そこは異色じゃないかと。
そうですね。残されてしみじみしてるんじゃなくて、青春の匂いを出しつつ残る感じって今までなかったから、いい残り方になったかなと。あとこの劇を俯瞰して見たら、人間はどんどん進化していって、テクノロジーはさらに加速して、それにみんな否応なくさらわれていくよというマクロな話ではあるんですけど、寄りで見たら「ということはさておき、一つひとつのミクロな話も輝いてますよ」というようなことにしたくて。そういうことにちゃんと目を向けられた劇になったと思うんです。みんなが遅かれ早かれ結局機械に飲み込まれるという大きな流れは見えていたので、むしろその過程とか具体的な事例を面白がっていこうというのを意識して作ったし、実際そういう劇になったと思います。
──これで「企画性コメディ」からさらに先に進めたことで、次はどうしていこうと考えていますか?
今回のように、実際の場所とか事件をベースにして劇を作るのって「元がある」からやりやすいですよね。世界をゼロから作るのって大変ですし…でもゼロから作る方が、やっぱり面白いというのもあるんですよ。だから今後、土地の力とか実話的なことを取り入れつつ作るにしても、「ウソ」の話もちゃんと作らなきゃな、と思っています。
──それで言うと、ヨーロッパ企画のインナーマッスルがしっかりしてきたのならば、どんな世界を扱ったとしても、ヨーロッパ企画らしくはなるだろうとは思いますね。
そうですね。やっぱりドキュメンタリーというよりは、そのよさも含めたエンターテインメントを作りたいんで、そのためにはちゃんと企画性も重視していくという。ところどころ実話っぽくて、何か手触りがある…昔作った『苦悩のピラミッダー』は、そういう意味ではローカル性を先取りしていたけど、あれに企画性を加えていくようなことかなあと思いますね。とりあえずイースター島のモアイを扱った話は、いつかやりたいなと考えています。
インタビュー:吉永美和子
約2時間10分を予定しています。途中休憩はありません。
通常の公演と同じように全編を上演し、その結果や反応を踏まえて公演内容により磨きをかけるために行わせていただいています。
それ以後の公演では、シーンが増減したり、セリフや演出内容(楽曲や映像)が変わる場合が多少なりともあります。
少しだけ安めの料金設定となっています。
作品の正式なお披露目を前に、内覧会のようなもの、と思っていただいて、広い心で大らかに楽しんでいただけますと幸いです。
本編上演終了後に出演者・演出家がトークショーを行います。
作品にまつわることや裏話など、ざっくばらんな内容です。
公演地によって関わったスタッフやゲストが飛び入り出演することもあります。
時間は30分程度ですが、興が乗ると少し長くなる場合もあります。
トークショーの間も客席の照明はほんのりついていますので、途中退場も比較的容易かと思います。
客席内の壁際や後方にビデオカメラが設置されます。
できるだけ音を立てないように気をつけたり、照明が暗くなるタイミングではディスプレイを隠すなどの努力はしていますが、多少、気になる場合があるかも知れません。
本編の上演内容や照明・音響などの演出効果は通常の公演と変わりません。
当日券は開演の1時間前から会場入口で販売します。
当日券は基本的に前売券の残席を販売しますが、前売券が完売している回でも舞台の一部が見えづらいお席などを僅かな枚数ながら販売はする場合があります。
当日券の販売見込みは各公演日になりましたらtwitter(@shinsekaihan)でお知らせします。
公演期間中でも劇場入口にスタッフがいる時間が限られています。
通常のお客様がロビーにいない本番上演中ですと、ロビーにお入りいただいて物販コーナーを見ていただくことも可能です。
通常の開演時間から10分後くらいに受付にお声掛けいただけると、スムーズにご案内できるかと思います。
外部リンク ⇒ サンライズプロモーション東京 - FAQ -