めざすのは、体験できるメニュー画面

山口:『AKIRA』UHDの何に感動したかって、トータルのパッケージデザインと、メニュー画面の操作性とデザインなんです。少ない情報で、すごくカッコいいんですよ。本当にスタイリッシュで、それが好みだったんですけど、そのお話を渡辺さんにしていたら、なんと『AKIRA』UHDのデザインを担当された黒須千尋さんが、今回の『ドロステ』の作業にも加わってくださって!もう夢みたいでした。メニューで意図されている動きをオーサリングでいかに実現できるか、という検証をやっていただき、仕上がりはもちろん素晴らしかったです。
渡辺:ありがとうございます。
伊尾喜:いやー、素晴らしかったですよね。
渡辺:ブルーレイとDVDを合わせて年間3000枚くらいを作業させて頂いているんですけど、ここ数年っていうのは、メニュー画面は簡素化されていく方向になっているんです。
伊尾喜:僕はそれがちょっと寂しいなぁと思ってたんです。パッケージや、メニュー画面も含めて作品の世界観の延長線上にあるべきだとも思っているので。メニュー画面というのはディスクを入れたら必ず出てくる作品の顔だったりもするわけですよね。自分が DVD を作っていた時っていうのは割と動画でメニューを作ること自体が「特典」みたいな意識もあったので……。
山口:伊尾喜さんの手がけられた『スウィングガールズ』と『バブルへGo!』ですよね。
伊尾喜:そうですね。
山口:言葉は悪いですけど、本当にクレイジーですよね(笑)。
伊尾喜&渡辺:(笑)。
山口:(実物を見ながら)これほんとヤバいです!必要以上のサービス精神ですよ。
伊尾喜:サービス精神が過剰なんですよね。
山口:過剰です(笑)。でも、『スウィングガールズ』のメニュー画面は、矢口史靖監督が好みそうなことと乖離してなくて、作品世界とも合っていました。『バブルへGo!』は、メニュー画面で余計なことし過ぎなんですけど(笑)、それがすごく楽しくて、感銘をうけました。伊尾喜さんが見事にディレクションされていらっしゃるからですよね。かなり勉強させてもらって、『ドロステ』も、影響を受けまくってます!
渡辺:(笑)。
伊尾喜:ありがとうございます(笑)。10年越しに褒めていただきました。『バブルへGo!』に関しては、洗濯機型タイムマシンっていうのがメインのアイテムなので、それをベースにしたメニューなんですよ。あのタイムマシンがもし目の前にあったら、触ってみたいじゃないですか。だから、メニュー画面で触っていじれるようにしたんです。
山口:ぜひ一度ご覧いただきたいんですが、メニュー画面にいくと、洗濯機がドーンって現れるんですけど、触れないボタンがないんですよ。
伊尾喜:全部触れます。
山口:そうですよね。そんなの楽しいじゃないですか!
伊尾喜:極端な話、洗濯機の電源ボタンを押すと、プレーヤーの再生が止まります。
渡辺&山口:(笑)。
伊尾喜:一瞬、なにが起こったかみんな分からなくなるんですけど(笑)。
山口:いやー、これは『ドロステ』頑張らないと、と思いました。



伊尾喜:今回は<ドロステレビ>がメニュー画面の中心アイテムになっているのが、本当に楽しくて……!メニューを選択すると、テレビのなかに、グワグワグワッーと、カメラが入り込んでいって、次の画面にいくっていうギミックが、すごく嬉しかったですね。
渡辺:テレビの中に入っていくギミックに関しては、見え方などを少し調整しています。
山口:メニュー画面の映像自体は、ヨーロッパ企画の大見康裕が作っているんですけど、メニュー画面と気持ちよく繋がるように0.0何ミリ差の微調整をキュー・テックさんにやっていただいているんですよね。
渡辺:みんなで映像の確認を何度もしました。少し気持ち悪くなったりもしながら(笑)。
山口:(笑)もう完璧で。本当にすごいと思ったので、それは第二の本編くらいのつもりでご覧いただきたいですね。
渡辺:あれは、我々も相当こだわってますからね。
伊尾喜:あと、特典メニューを開くと、音が……。
渡辺:音にもお楽しみがあるんですよね。
山口:はい、ぜひ、これは見つけていただきたいですね!



先鋭たちの集合知のようなディスクに

渡辺:パッケージに対して熱い思いを持たれている伊尾喜さんや山口監督の熱量を、ちゃんと出せたディスクになっていると思います。
山口:本当に僕のわがままに辛抱強くお付き合いしてくださって。「私物化するんじゃないよ」って怒られてしまうんじゃないかな、っていうくらいキュー・テックのみなさんと作業させていただいたので、ドキドキしてたんですけど。
伊尾喜&渡辺:(笑)。
渡辺:ただ、『AKIRA』にも携わっていて今作のディスクコーディネートも担当させて頂いた守谷美紀も言ってたんです。「エンドユーザーだけじゃなくて、作品をつくる方たちのためのディスクでもあるということを改めて感じることができました」と。
伊尾喜&山口:おー!
渡辺:すごいこと言うなって思ったんですけど(笑)。ただでも、本当その通りだね、って。監督とか伊尾喜さんはわがままをいくらでも言って大丈夫なんですよ。むしろ、そうでなければいけない人たちなので(笑)。
伊尾喜&山口:(頭を下げるふたり)。
渡辺:それをなんとかしていくのが、僕らの仕事ですから。なので、守谷がそういう気持ちになれた事も含めて『ドロステのはてで僕ら』は近年の代表作の一つだと思っていますし、本当に面白いディスクだと思います。
山口:こちらこそ、本当にありがたいです。『ドロステ辞典』には、携わっていただいた方、全員のお名前を載せているので、ぜひそちらでも確認していただきたいです!

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映画「ドロステのはてで僕ら」

Blu-ray:¥6,050(税込)/DVD:¥3,850(税込)

雑居ビルのカフェを舞台に、2分先の未来が見える“タイムテレビ”を巡る騒動を描いたエクストリーム時間SF。
高画質を追求しリマスター処理を施した本編に加え、監督・脚本家・出演者による3種類のオーディオコメンタリーを収録。
また、ブルーレイ版のみの特典として、前⼈未到の⻑回し撮影を追ったメイキング(コメンタリー付き)や、本作の原案となるショートムービーなども収録、さらに特製ケースや、滝本晃司監修の「サウンドトラックCD」、舞台裏を全網羅したブックレット「ドロステ辞典」付き!

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