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8 月 1 日、大阪市内某所にて『ロベルトの操縦』のマスコミ向け記者会見が行われました。最近はアクアライナーや通天閣など、取材する側もされる側もやや浮かれ気味になる仕掛けの会見が続きましたが、今回の会場は普通のホール。上田誠&全出演者も、舞台上にビシッと整列するなど、ヨーロッパ企画らしからぬ神妙なムードで会見は始まりました。

 

まず上田が「ヨーロッパ企画は 13 年間やってきて、今回が 30 回という節目の公演。どうしてもプレッシャーになるけど、そこで集大成をということではなく、何か新しいことをやるタイミングなのかなと考えてます」とあいさつ。これまでの芝居を振り返る説明をした後、「ヨーロッパ企画は“企画集団”だと思い至りまして。大きい空間だからこそバカバカしいことがやれるという、より企画性の高いことをやっていきたい」と展望を語った。

 その第一弾として選んだテーマは、すでにチラシや各種インタビューなどで公表されている通り「移動」。「僕らはワゴンで、京都と東京を行ったり来たりしていますが、移動の車の中ってすごくテンションが上がるんです。あと、自転車に乗ってる人がつい鼻歌を歌ってしまうのも、不思議なことだなあと思っていて。移動している状態って、特殊な別空間みたいになってる感じが、すごくするんです」と上田。さらに移動する側だけではなく「僕らは京都でずっとお芝居をやってるけど、周りの人が東京に移動することを決めた時に“くそ、移動されたか!”と思ってしまう(一同笑)」と、「移動される側」の心理にも言及。「(観客に)今回は大変移動したな、と思ってもらえる公演になることうけ合いです」と、いつもにもまして、アクティブな舞台になることを約束した。

 

 

続いては、劇団の新作本公演としては、なんと 4 年ぶりとなる 2 人の客演、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)と山本真由美があいさつ。中山は「ヨーロッパ企画さんは、演劇と生活の距離感が、すごく近い所でモノを作っている様が面白い。なので京都で彼らのモノ作りに参加すれば、相当演劇的に貴重な体験ができると思っていました。ぜひ参加したいと言い続けてきて、夢がやっと叶ってココにいるという状況です」。さらに、上田に向かって「僕は自転車に乗りながら鼻歌を歌ってしまうんですが…あれ、(周りの人に)気づかれてるんですね。今日一個成長できました」と告白して、笑いを誘っていた。

 

山本は「去年山脇唯さんと一緒に、共演させていただいた舞台(柿喰う客『露出狂』)がありまして。ひょんなご縁から、またヨーロッパ企画でご一緒できるなんて思いもよらなくて、本当に光栄に思ってます。私は大阪出身で、今は東京に住んでますが、京都に住むのは初めて。京都に滞在しながら稽古させていただくのは、私も貴重な体験だなあと思っていて、忘れられない夏になるのではないかと思います」との言葉が。

 

続いては、上田が「一度も記事にしていただいたことがない(笑)」と、自虐的に紹介した(駐:実際は、こちらでガッツリ取り上げていただいた ことがあります)、会見恒例の劇団員コーナー。今回は「移動コメディの後に続く、企画性の高いコメディ」を、本多・永野・角田・酒井の順番でプレゼンテーションした。

 本多は「劇場に犬とかの獲物を放って、それをみんなで狩る」という【狩猟コメディ】、永野からは「コメディをツールとして使うという開き直りのスタンス」の【コメディコメディ】、角田からは「移動の真逆をいく路線」で【居座りコメディ】、酒井からは「人類は結局地球の重力にとらわれるはかない生き物」をコンセプトとした【自由落下コメディ】が提案された。この中から上田は「実はヨーロッパの初期に同じ企画の舞台を考えていた」という本多案と、「『ゴドーを待ちながら』を彷彿とさせる、温故知新のような作品になるのでは」という角田案を、次回以降の公演に採用した…と言っても、ただの口約束に終わる可能性大だろうけど(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は、記者からの質疑応答。主なやり取りは以下の通り(回答は全て上田誠)。

 

──本当に、役者さんが移動しながら演技をするという構造になるのでしょうか。

本当に話の中で、どんどん(役者が)移動しながら話が展開するということを考えています。今回はタイトルが『ロベルトの操縦』なので、結局は「乗り物に乗る」ことで、面白い移動が作れないかという方向になりました。『衛星都市のサウダージ』( 07 年)という作品は宇宙船の話だったんですけど、その時はロビーで話してるような状況と変わらなかったんです。今回はもう少し「移動感」が出せるような仕掛けを考えております。役者の動きはかなり激しいですね。(稽古で)若干ケガ人が出かけたぐらいです。

 

──セットはどういう感じになっていますか?

セットを単純にチェンジすることで、いろんな場所を見せる方法はあると思うんですが、僕はそれがあまり好きではないんです。シチュエーションを具体的に作って、芝居を見てるうちにどんどんその空間が愛おしくなってくるということは、すごくあると思うから、ずっとシチュエーション・コメディをやってきたわけで。なのでそれ(ワンシチュエーション)を維持しながらも、移動するという方法を考えています。さらに(今まで続けてきた)高低差を使った舞台美術ということを維持しつつも、移動性のある舞台ということで。

 

──それは飛行機ですか?

チラシを作った時は、相当飛行機の可能性が高かったんですけど(一同笑)。飛行機だと、移動してるというよりは機内の話になってしまうので、飛行機じゃなくしました。

 

──ロベルトは出てくるんですか?

出てきます。誰というのは言えませんが、でも本当に『ロベルトの操縦』としか言いようのない話です。

 

──なぜ今回客演を呼ぼうと思われたんですか?

 もともとヨーロッパ企画って、第 20 回公演ぐらいまでは、スタッフワークもメンバーや身内で回してたぐらい、内弁慶な集団だったんです。でも、中山さんも出ていた『昭和島ウォーカー』( 08 年)は、キャストの半分がヨーロッパメンバーで、残りの半分はそうじゃない方々という舞台だった。それがやっぱり面白い混ざり方というか、何か新しい掛け算ができたという感触があったんで、それで(客演を)お呼びしようと決めました。

 

──中山さんと山本さんを選ばれた理由は。

 中山さんは、それこそ『昭和島』で出会って、当たり前ですけど面白かったんですね。まだまだ僕がわかってない部分もきっとある中で、またどこかで一緒にやらせてもらえたら嬉しいとは、つねづね思っていました。逆に山本さんは全然面識がなく、山脇が出ていた舞台を一回観ただけだったんですけど、すごく頼もしく思えたんですね。で、移動のコメディをやろうという時に、何かたくましい人をやっていただけたらいいなと思って、お呼びしました。今のところ、明らかにいつもの稽古とは違っているので、すでに「お呼びしてよかったな」と思っています。

 

 

 若干固い雰囲気で始まった会見も、劇団員コーナーの頃には笑い声もあふれ、質疑応答の頃にはだいぶんとなごやかな雰囲気になっていたのは、さすがヨーロッパ企画というところか。その中でも少しずつではあるけど、つまびらかにされてきた『ロベルトの操縦』の全貌。おそらく多くの記者が、単なる一ファンとして「一体どんな舞台になるのか?」と、胸をふくらませるような気分になったに違いありません。

 

(取材・文:吉永美和子)

 

 

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