■作品の反応をじかに見られるのが、舞台映像製作のモチベーション(大見)
永野 ヨーロッパ企画から発注される舞台映像って、何か他の劇団とは違った特徴があったりするの?
大見 上田君が結構アナログ志向だから、すごくローテクな感じなんですよ。削ぎ落していく、と言えばいいかな。他の現場とは、結構落差が激しいですよ。よそでは「もっとカラフルに」と言われることが多いけど、ヨーロッパでは色味を抑えることが多い。
永野 確かに『曲がれ! スプーン』( 10 年)のオープニング映像とか、すごくシックだったよねえ。やはり、よそとは要求されることが全然違うんだ。
大見 わざと手ぶれをさせたりとかね。でも僕自身、そんなにくっきりした映像って好きじゃないんですよ。質感とか、手触りが感じられる方が好き。
永野 なるほどなるほど。もともとのセンスが、割とそっち側なんですね。ヨーロッパ企画の感覚に、近いっちゃ近いと。
大見 そうですね。汚しのない、パキッとした感じの映像は、あんまり。
永野 大見さんはデジタルっぽいことも、スタイリッシュなこともバッチリできるけど、そういうアナログ的なところも、ちゃんと押さえられてる。それがいいなあと思います。で、今回『ロベルトの操縦』は、上田からどんなことを言われてるの?
大見 今回は、装置の一部に背景的な映像を流すというので、それを作ります。今回はセットの一部という感じになるみたいです。
永野 じゃあ今回、舞台美術だ(笑)。
大見 そうですね。ずっと後ろで流れてるらしいから。
永野 ガッツリ劇世界に関わってくるという…って、もう演劇の深みにはまってるじゃないですか(笑)。
大見 まあまあね。でも最近はそんなのばっかりです。どっぷりですよ。
永野 でも大見さんは、基本的にずっと一人で PC に向かって仕事してるわけでしょ? 僕らだったら、普段から他のメンバーに相談できたり、発散できたり、切磋琢磨できたりするんだけど。そういう孤独な作業の中で、どうやってモチベーションを…自分を「うぉ、楽しいぜ!」という状態に持っていってるのかなというのが、個人的に気になってて。
大見 好きなことを仕事にできてるという充実感かなあ。それと舞台作品だと、観てくれる人がたくさんいるというのが。
永野 あー、作った作品に対する反応がわかると。
大見 反応がわかるのは、やっぱやってて楽しい。以前上田君の『ミッション女 プロジェクト男』( 10 年/※註3)の劇中映像を作った時は、指示が細かい割には狙いが全然わからなくて、本当に大変だったんですよ。
永野 その作業、僕もそばで見てたんですよ。上田は画面見ながら笑ってるんだけど…。
大見 僕は作ってても、全然面白いとは思わなくて(笑)。でも出来上がった作品を実際に観ると、上田くんが笑ってた所でお客さんも笑ってたから「こういうことだったんだな」と納得して。やっぱりそれは、舞台ならではの映像作りの楽しさで、モチベーションだなと思います。
【質問:あなたが操縦したい物は何ですか?】
大見 車ですね。 男って、車持ってからじゃないですか?(笑)大人の男といったら、やっぱり車ありきだから。
永野 こういう質問には、「己自身」と答えるようにしています。実際今まで、舞台でケガしなかったことがほぼないので、オーバーヒートしないようにしなきゃな、とは思います。まあ、地味なケガばかりなんですけどね(笑)。
(2011/8/5収録)
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