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(左:永野 右:大見)

舞台装置と人間が有機的に関わるような芝居」 を信条とするヨー ロッパ企画。その舞台では美術、照明、 映像などのスタッフワーク が、脚本や役者と同等──時にはそれ以上に、 重要な役割を果たしてい るのです。そして『ロベルトの操縦』 では、 どんな舞台が立ち上がることになるか? 今回参加している各スタッフに、それぞれの仕事の内容や心得、 ヨ ーロッパ企画にまつわる裏話などを、ヨーロッパの役者たちが、深く鋭く聞き出します。

 

■いろんな所に球を投げても返してくれる、信頼できる映像スタッフ(永野)

 

永野 大見さんは、ヨーロッパ企画のメンバーってことで…いいんだよね?

大見 その辺は曖昧にしてますけど、一応劇団の名刺は持ってます(笑)。

永野 一時期は劇団 HP で連載もしていたしね(※註1)。ヨーロッパに入ったのは、 2005 年ぐらいからだったっけ?

大見 そうですね。『平凡なウェ〜イ』( 05 年)の時にヨーロッパが映像スタッフを募集していて、最初は「京都に住んでないから、やることないかな」と思ってたんですよ。そうしたら、僕にヨーロッパ企画を薦めてくれた知人が、上田君との会談をセッティングしてくれたんです。「 9 時に○○に行きなさい」って言ってくれて(笑)。

永野 その人の言いなりに(笑)。最初の仕事って何だったの?

大見 正式に加入する以前から、舞台の DVD の本編の編集とかもしていたけど、一番わかりやすいのは映像用のロゴマークかな。あの「 E 」の文字が、コロコロって転がってる奴。

永野 あー、そうそう! あれ、大見さんと出会ってなかったら転がせなかったんだね(笑)。今はヨーロッパ企画以外の演劇公演の映像の仕事も多いけど、たとえばどんな劇団の仕事をやってるの?

大見 シティボーイズとか、 ムロ式とか 、あとはゴジゲンとか。お笑いだと、ラバーガールのライブ用の映像も作りました。 EXILE の舞台にもちょっと関わってます。

永野 舞台映像の仕事は、結構大半を占めてる?

大見 今は七割ぐらいが演劇関係。ただ自分としては、普通の映像仕事と半々ぐらいの割合がちょうどいいかなあと思ってるんだけど。

永野 僕はすごく大見さんのセンスが好きで、信頼してるんですよ。僕が作・演出する舞台でもいろいろと映像を作ってもらってるけど、どれだけ細かい指示を出しても、全部ツーカーで応えてくれる。僕の妙な趣味も理解してくれていて、いろんな所に球を投げても返してくれる気がするんですよね。もうね、永野宗典の世界は、大見さんありきですよ(笑)。

大見 実はヨーロッパ企画は意外と、舞台でそんなに映像を使ってないんです。でも永野さんとは『ムネリンピック』( 10 年)『虚業』( 11 年)と、一緒の舞台が続いてますね。

永野 もう、ショートショートムービーフェスティバルで『すべて妖怪のしわざ』(※註2)の映像編集をしてもらって以来、僕のパートナーだと思ってますからね。上田よりも、パートナーシップは強いと思ってます(笑)。

 

 

 

■作品の反応をじかに見られるのが、舞台映像製作のモチベーション(大見)

 

永野 ヨーロッパ企画から発注される舞台映像って、何か他の劇団とは違った特徴があったりするの?

大見 上田君が結構アナログ志向だから、すごくローテクな感じなんですよ。削ぎ落していく、と言えばいいかな。他の現場とは、結構落差が激しいですよ。よそでは「もっとカラフルに」と言われることが多いけど、ヨーロッパでは色味を抑えることが多い。

永野 確かに『曲がれ! スプーン』( 10 年)のオープニング映像とか、すごくシックだったよねえ。やはり、よそとは要求されることが全然違うんだ。

大見 わざと手ぶれをさせたりとかね。でも僕自身、そんなにくっきりした映像って好きじゃないんですよ。質感とか、手触りが感じられる方が好き。

永野 なるほどなるほど。もともとのセンスが、割とそっち側なんですね。ヨーロッパ企画の感覚に、近いっちゃ近いと。

大見 そうですね。汚しのない、パキッとした感じの映像は、あんまり。

永野 大見さんはデジタルっぽいことも、スタイリッシュなこともバッチリできるけど、そういうアナログ的なところも、ちゃんと押さえられてる。それがいいなあと思います。で、今回『ロベルトの操縦』は、上田からどんなことを言われてるの?

大見 今回は、装置の一部に背景的な映像を流すというので、それを作ります。今回はセットの一部という感じになるみたいです。

永野 じゃあ今回、舞台美術だ(笑)。

大見 そうですね。ずっと後ろで流れてるらしいから。

永野 ガッツリ劇世界に関わってくるという…って、もう演劇の深みにはまってるじゃないですか(笑)。

大見 まあまあね。でも最近はそんなのばっかりです。どっぷりですよ。

永野 でも大見さんは、基本的にずっと一人で PC に向かって仕事してるわけでしょ? 僕らだったら、普段から他のメンバーに相談できたり、発散できたり、切磋琢磨できたりするんだけど。そういう孤独な作業の中で、どうやってモチベーションを…自分を「うぉ、楽しいぜ!」という状態に持っていってるのかなというのが、個人的に気になってて。

大見 好きなことを仕事にできてるという充実感かなあ。それと舞台作品だと、観てくれる人がたくさんいるというのが。

永野 あー、作った作品に対する反応がわかると。

大見 反応がわかるのは、やっぱやってて楽しい。以前上田君の『ミッション女 プロジェクト男』( 10 年/※註3)の劇中映像を作った時は、指示が細かい割には狙いが全然わからなくて、本当に大変だったんですよ。

永野 その作業、僕もそばで見てたんですよ。上田は画面見ながら笑ってるんだけど…。

大見 僕は作ってても、全然面白いとは思わなくて(笑)。でも出来上がった作品を実際に観ると、上田くんが笑ってた所でお客さんも笑ってたから「こういうことだったんだな」と納得して。やっぱりそれは、舞台ならではの映像作りの楽しさで、モチベーションだなと思います。

 

 

 

【質問:あなたが操縦したい物は何ですか?】

大見 車ですね。 男って、車持ってからじゃないですか?(笑)大人の男といったら、やっぱり車ありきだから。

 

永野 こういう質問には、「己自身」と答えるようにしています。実際今まで、舞台でケガしなかったことがほぼないので、オーバーヒートしないようにしなきゃな、とは思います。まあ、地味なケガばかりなんですけどね(笑)。

 

(2011/8/5収録)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【註】

註1:大見がヨーロッパ企画の東京事務所の管理人をしていた頃、「消灯せよ! 下北ハウス管理人日記」というブログを連載していた。 2009 年 9 月から始まり、事務所が別々になった 2010 年 12 月まで、週 1 回ペースで更新。東京に出張に来たメンバーたちの素顔を紹介していた。

 

註2:永野宗典が「第2回ショートショートムービーフェスティバル」で発表した作品。すべての不条理を「妖怪のしわざ」と考えようとするイジメられっ子の心象風景を、実写とアニメを融合させた世界で表現。

 

註3:上田誠が作・演出した、福田転球&平田敦子の二人芝居シリーズ。敵基地から脱出しようとする2人の工作員の右往左往ぶりを、点と線だけのモニター画像で見事に描きだし、好評を得た。

 

(取材・文:吉永美和子)

 

 

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