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角田貴志×土佐和成×西村直子(オーディションメンバー)鼎談


――オーディションでヨーロッパ企画に参加されたお三方ですが、外側から見たヨーロッパ企画はどんな印象でしたか?

角田 僕はその時、舞台にはぜんぜん興味がなくて、「サマータイムマシン・ブルース2003」とその次の公演を観た印象しかないですけど、普通に自分たちと同じような、テレビのお笑いを見てるような人たちが立ってるな、っていうのが一番大きい印象で、それがいいなと思ったところですね。
土佐 印象かぁ……なんかホームページを見た時に、なんかねぇ、ボーリング場でね、あの、球が出てくるところで集合写真を撮ってた……その印象ですね。
「なんでこの人らボーリング場で集合写真撮ってはるんやろ」っていう。劇場以外では目にする機会もないので、イメージはそんなになかったかもしれないですね。
西村 私も公演を見たことがなかったので、ホームページとテレビで見たコントの印象で、しっかりお芝居をする人たちという印象はなかったですね。

――では、オーディションを受けられた動機は?

角田 それこそ公演を2つ見た後に、ホームページを見たら劇団員の募集があったんでなんとなく……なんとなくですね。
土佐 違うお芝居に出た時、演出家さんに「何か面白い劇団ありますか」って聞いたら「ヨーロッパ企画」ってすぐに答えが返ってきて、ホームページを見たら「劇団員募集」ってあって。
でも「劇団員募集」ってちょっと怖いというか、劇が面白くてもその人たちがどういう人たちかわからんところがあって、いきなり行くのは怖いな、と思いつつも、とりあえず行ってみようと思って行きましたね。
西村 私は、ホームページを観に行った時にもう既にオーディションの応募締切が三日くらい過ぎてたんですけど、なんで思ったのか「出してみよう」ってなんとなく思って。
ホームページのゆるさじゃないですけど、なんか優しそうな雰囲気だったので出してみたら「大丈夫ですよ」って連絡が来ました。なんか劇団劇団してなかったというか、厳しくなさそうな。
土佐 オーディションのときに、同志社大学の校舎をお借りしてやったのかな。みんなそうやんね?
西村 同じ日じゃない? 私最後でした。
土佐 その時に、自転車で事故って顔がボコボコになった石田くんが迎えに来て。
西村 ジャージ着てましたよね、しかも。黒いジャージ着てた、アディダスの。
土佐 「ボクサーやん」っていう、やけに傷だらけの人が迎えに来たな、っていう印象がすごく強いですね。
西村 全員、石田さんやったんかな?
土佐 オーディションしてくれたのは「上田・諏訪・永野」なんですよ。
石田くんは、あれはもう迎え役だけのためにおってくれたんやね。
角田 たぶん、そうじゃない?
土佐 別にオーディションのとこにおってくれてもええのに。そこに線引きが、今思えば。
西村 だから、初めて会ったのは石田さんなんですよ。
土佐 そうね、コミュニケーションを取ったのは。
オーディション、石田くんもおってくれたらまた感じ違ったのに。
西村 でも、オーディションの合格の電話をもらったのも石田さんでしたよ。
土佐 え! そうなん!?
角田 あ、そうかも。合格とかは覚えてないけど、「来ませんか」みたいな電話が石田くんからかかってきたのは覚えてる。
土佐 だから、合格者は電話なんやわ。今初めて知った。
僕は上ちゃんからお断りのメールが。そらそうやな、断りを電話ではしにくいもんな。
角田 まぁ、代表からっていう。
土佐 電話なんや、しかも石田くんなん、そこ。「上田」ではなく?
角田 それはすごい覚えてる。石田くんが「空いてますか」みたいな、次の公演の手伝いに来るかどうかとかそんな感じで。合格とかそういう言葉ではなく。
土佐 「次ありますけど~」みたいな。
角田 「来てくれますか」「じゃあ行かせていただきます」と。
土佐 じゃあ合格って言われてないんや。僕はもちろん言われてないけど、その後も。(笑)
角田 確かにそう言えば言われてないなぁ。
土佐 そらそうやね。電話して「今回はちょっと合格っていうことで」っていうのもなんか変やもんね。
角田 そっから何が始まるわけでもなく。(笑) 急にレッスンが始まるとか。
西村 初めて行ったのは何やろう。「ショートショートムービーフェスティバル」かな。
土佐 新風館でやったやつか。
西村 京都にあんまり来たことがなかったから、電車の乗り継ぎが心配で。
土佐 奈良から出たことなかったから。
西村 そんなことはないけど(笑)
土佐 何してたん? 「ショートショート」に行って。
西村 なんか、撮影の手伝いみたいなんしたかなぁ。本多さんがよく喋ってくれた。
角田 僕、瀬戸中さんやなぁ。すごい覚えてる。
土佐 あ、最初に喋ってくれた人? うわぁ、僕誰やろなぁ。
でもね、最初はね、中川さんがすごい喋ってくれた。
西村 担当があったんかな、そんなにバラけるってことはね。
角田 中川さんは……ハズレやな。
土・西 (笑)
土佐 でも、新しい人が入ってきたときとかに、よく見てたら今でもやっぱり中川さんが優しいんですよ。
西村 え~、嘘ぉ。めっちゃ厳しかったですよ。怒られましたもん、『ムーミン』の仕込みの日に。
土佐 どんな風に?
西村 めちゃくちゃ人数が少なくて、仕込みが。
平台を一人で運べなくてよたよたしてたら、「女やからってどうたらこうたら」みたいな。
土佐 そんなひどいこと言う!?(笑)
西村 こんな人もいるんや、嫌やぁ、と思った。(笑)
土佐 そっか、優しかったけどなぁ、中川さん。
西村 後輩としてみなされてたのかもしれん。
土佐 それはあるやろなぁ、同級生に優しいっていうのがあるから。

――土佐さんはどのような流れで参加されたんですか?

土佐 「お手伝いでもなんでもいいんで、何かあったら言ってください」って言って。
次が『ムーミン』っていう公演やったんですけど、舞台美術をつくってました。本番はスタッフとしてイカダを引っ張ったりしてましたね。みんなその時はもう参加してたの?
西村 私は映像出ししてました。
角田 僕は全然本番には……パンフの表紙を描いて、あとは名古屋に行った覚えはあるけど、何してたんやろ……。
土佐 よく名古屋行ったね。(笑)
角田 何要員で行ったか覚えてないなぁ。セットかな。
土佐 セット建ててたんじゃない?

――実際に役者として参加されたのはいつからですか?

西村 『ムーミン』の次ですね。『インテル入ってない』っていう公演で。
初舞台やったんですけど、なんかあんまり稽古してない印象じゃないですか?
角田 台本が本番の朝とかに上がったんじゃない?
土佐 永野さんと本多くんが映画の『サマータイムマシン・ブルース』の撮影であんまり稽古に来れなくて。
人数も僕ら三人が増えて、黒木さんもいて、その公演に参加する人数が多かったんですね。
西村 『ムーミン』から一気に増えたから。
土佐 たぶん、上ちゃんが台本書くのに苦労したっていう。
後から思えば、そりゃ大変よね、元から居た劇団員の人からしたら。
元の人数と同じくらいの新しい人たちがいて。
僕ら、そんなこともあんまりわからないんで。
西村 芝居もしたことないようなときに。
土佐 こんな感じなんやぁ、と知っていく段階やったのかもしれないですね。

――『サマータイムマシン・ブルース』にはどのような印象がありますか?

土佐 僕たちは2004年から参加させてもらって、一年後くらいにもう『サマータイムマシン・ブルース2005』があって。
西村 『インテル入ってない』、『平凡なウェーイ』、で『2005』かな。
土佐 三つめの公演で。映画化もしたというのがあって、みんなが大事にしてる公演というか、それにすぐに参加させてもらえたっていうのはすごく嬉しかったですね。
ただ、お芝居も始めたてみたいな感じで、何ができるというわけでもなくて。だからやっぱり、DVDとか見ても「うわぁ」と思ったりすることもあるんで、それを取り返したいなぁ、という気持ちはありますね、やっぱり。
西村 『2005』はわけわからんとやってたな、というところがあるので。
今はまぁ、理解しながらできてるんじゃないかなぁ。
角田 そうですねぇ。『2005』をやってた当時、まぁ、今もやってるところでもあるんですけど、上ちゃんの演出の意味がわからんところがあって。
西村 まだわかってなかった(笑)
角田 語りのところで「語り部の口調になる」って書いてあって。
河童の話を、昔話のような、それこそ柳田国男の『遠野物語』みたいなことなんかな、と思ってやったら違うらしくて。
西村 イメージが。
土佐 あそこなんかずっと調整入ってるよね。「ちょっとジジイ過ぎますね」とか。
角田 「UFOを目撃した証言者みたいに」って言われてやったら、それも「違う」と。
西村 どれが正解なんか。(笑)
角田 だから、それを探すツアーになると思いますね。
西村 答え見つけてほしいなぁ。

――では、今回の『サマータイムマシン・ワンスモア』はどうですか?

土佐 そこまで考えずに稽古をやってきたんですけど、稽古終盤、本番直前になってやっぱり、二本分っていう量の多さを痛感してる感じかもしれないですね。やること多いなっていう。
西村 セリフがね。
角田 「ワンスモア」の方がやってて楽しいなっていう感じはあるんですけど、それは単純に新しいことをやってるからで、それはもしかして、「ブルースしんどいな」っていう前兆かな、と(笑)
土・西 (笑)
土佐 「ブルース」は言うても13年前にやらせてもらってて、その時のことを思い出しながら、とは言えなぞらんように、っていう作業で。
「ワンスモア」はただただ新鮮で、キャラクターも「あ、こいつこういう奴やったんや」っていうのが。
西村 とっかかりにはなりますよね。
土佐 そもそも元居たメンバーの方がやられてた役をやってるので、やっぱりちょっとやりにくさというか、比較のプレッシャーを感じてた部分が、「ワンスモア」ができたことによって少しほぐされたというか。
西村 自分に寄せられるような感覚はありますね。

――ヨーロッパ企画に参加されてから14年経って、改めていかがですか?

土佐 古い方になってきてるな、という感じはありつつ。
西村 若くない。
土佐 やっぱり劇団の昔の話をするときに出てくるのは最初の五年の話が多いし、「そこはそうやろなぁ」と思う部分はあって、どっかでお邪魔してる感覚というか、良いか悪いかは別にして、後から仲間に入れてもらってる感じは未だにあって。あっという間やったなぁ、と。
西村 なんも考えてなかったから。
土佐 なんも考えてないことはないけど(笑)
「楽しい、楽しい」でやってきたら14年経ってた、っていう感じかもしれないです。
それが20年になったら、もしかしたらまた違うかもしれないですけど。
西村 その線引きはありますよね。
土佐 20周年の気持ちにはなってるんですよ、もちろん。
でも、あんまり14年のやつが「20周年ありがとうございます!」って言ってても変なんで。(笑)
頃合いを見てます。良いところで着地したいな、と。
西村 控えめに、かつ温度を下げないように。
土佐 14年間はあっという間でしたけど、色々なことがありましたし。
台本が書かれへんとか、それこそメンバーが抜けたりとか。
だから、続けていくことが大事というか、そこを大切にしたいなと思います。
西村 新鮮さは損ないたくない、「なぁなぁ」にはなりたくないな、と思いますね。
上田さんに刺激を与えられるようなことをサボらないようにはしたいです。
角田 まぁ、なぁるようになる……身を任せるだけですかね。