ヨーロッパ企画がおくるエクストリーム時間SF
毎年の本公演で1万5千人を動員する人気劇団ヨーロッパ企画。本公演以外にも、映画やドラマの脚本執筆やイベント、バラエティ番組制作、ラジオ、携帯アプリ開発など、演劇の枠に捉われず、多方面にわたってコンテンツ制作を展開。役者ひとりひとりが短編映画の監督を手がけるなど、劇団でありながら、映画や映像作品にも注力してきた。
そして2020年、ヨーロッパ企画として初めて劇団全員で取り組むオリジナル長編映画『ドロステのはてで僕ら』が完成。彼らのホームグラウンドである京都・二条のカフェで撮影を敢行。その後、クラウドファンディングプラットフォーム「Motion Gallery」にて国内外の上映に向けた支援を募集したところ、なんと開始から1日も経たずに目標達成率100%を突破。最終的に達成率617%を記録し、劇団にとって、満を持しての映画製作への期待の高さをうかがわせた。
原案・脚本は、劇団代表、上田誠(『サマータイムマシン・ブルース』『夜は短し歩けよ乙女』『前田建設ファンタジー営業部』)。メガホンをとるのは、ヨーロッパ企画の映像ディレクター、山口淳太(「警視庁捜査資料管理室」)。そして出演は、ヨーロッパ企画と藤谷理子、ヒロイン役には、『かぐや姫の物語』『四月の永い夢』『七つの会議』『仮面病棟』などで知られ、ヨーロッパ企画とは初タッグとなる、若手実力派・朝倉あき。そして、京都出身の7人組バンド、バレーボウイズによる主題歌「タイトルコール」が、エンディングを爽やかに盛り上げる。
これまで時間やSFをテーマにするのを得意としてきたヨーロッパ企画が手がけた、まさに“時間SF映画”の決定版。
合成を一切使わない上、全編長回し撮影でタイムトリップを映像化する ――
その無謀ともいえる挑戦を、劇団ならではの結束力で乗り越えた奇跡の瞬間が連なる70分!
とある雑居ビルの2階。カトウがギターを弾こうとしていると、テレビの中から声がする。
見ると、画面には自分の顔。しかもこちらに向かって話しかけている。
「オレは、未来のオレ。2分後のオレ」。
どうやらカトウのいる2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差で繋がっているらしい。
“タイムテレビ”の存在を知り、テレビとテレビを向かい合わせて、もっと先の未来を知ろうと躍起になるカフェの常連たち。さらに隣人の理容師メグミや5階に事務所を構えるヤミ金業者、カフェに訪れた謎の2人組も巻き込み、「時間的ハウリング」は加速度的に事態をややこしくしていく……。
襲いかかる未来、抗えない整合性。ドロステのはてで僕らは ――。
絵の中の人物が自分の描かれた絵を持ち、その絵の中の人物も自分が描かれた絵を持ち……という、無限に続く入れ子のような構図のこと。