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およそ1年ぶりとなるヨーロッパ企画の本公演。この1年間、ヨーロッパ企画メンバーがどこにいて何を考えていたのか。お互いにつかず離れず動いていた1年間を振り返ります。

 

角田貴志×中川晴樹×本多力編 酒井善史×諏訪雅×西村直子編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■「男肉 du Soleil は、今や団員扱いになってます(笑)」(石田)

 

石田 去年やったことってあまり覚えてないけど、男肉 du Soleilに2回出たっていうのだけは、ハッキリと(笑)。本公演と本公演の間に、2回も出てました。本当、観てる分にはすごく好きだけど、やるのは無理と思ってて。あんな裸で、ずうっと踊り続けるなんて、自分の体力では絶対無理だろうなあと。で、実際に立ったら、全然ヘロヘロ。自分ではピーン! とやってるつもりでも、舞台写真見たら、こんなん(ヘロッとしたポーズ)ですもん。まあでも「それでいいんだ」と、団長(池浦さだ夢)に言われたから。なんか普通に、イジられてる感じでした。
土佐 石田君、まだ1回目(『Kの結婚前夜』)はゲスト扱いやったけど、2回目(『団長のビバリーヒルズ・コップ』)はもう全然、団員やったな(笑)。
石田 やっぱそうだよね?「ここは別に俺じゃなくてもいいじゃん」みたいなシーンも、団長が振ってくるんですよ、もう最近は(笑)。
永野 メンバー的な扱いされて。
石田 (昨年男肉に出演した)中川さんは完全にゲスト扱いでしたよね? カッコ良かったですよね? 何か。
土佐 まあ中川さんは(出演が)1回だけやったからね。やっぱ1回目はそういう感じで、2回目でようやくみんな馴染むんやろうね(一同笑)。
石田 1回だけじゃダメかもわからんね、男肉は。
土佐 もうずっと出たらええんちゃう?
石田 でも永野さんが「出たい」って言ってて。
永野 うん。この前のアフタートークで、何となく。『永野寅次郎の男肉はつらいよ』っていうタイトルでやる、っていう話にはなってるの(一同笑)。
石田 でも次回は『石田剛太のスペース・コブラ』って案も水面下で進んでて、何かもう決まりそうだって…しかも三部作(一同笑)。マジかよ、何か仕事入れー! って思ってるけど…マズイなこれ、団長見たら(笑)。でも本当、ヨーロッパの公演なんて、男肉に比べたら本当に楽よ。楽、って言ったらアレやけど。
永野 1年前に知りたいもん。出演すること。体力づくりから始めておきたい(一同笑)。
石田 もう全身全霊かけてやるから…だから、やる前に怖くなるんですよ。もう疲れるのわかってるから、すごく逃げ出したい気分になる。体痛くなるわ泣きそうになるわで。
永野 想像を絶するしんどさだったと(笑)。
土佐 でも最近は、お客さんも男肉のノリがわかってきて、客席も盛り上がるやん? じゃあもう、踊っちゃうやろ?
石田 いやでもあれ、みんなめっちゃくちゃ冷静なんよ。僕も最初はちょっと興奮して「ワー!」って感じでやってたけど、団員たちは全然そんな感じじゃない。「今ここにいるから、次はあっちに行こう」とか、意外と冷静に考えてやってるんよね。
土佐 じゃあ別に、客席盛りがってようが盛り上がってなかろうが、あまり関係ない?
石田 ないんよね。盛り上がってなかったら、逆に燃えるとか言うもん。
永野 わー、変態やなあ(笑)。
土佐 ドM集団(一同笑)。それはちょっと、コメディとは違う感じやね。やっぱりコメディはお客さんが笑ってくれたら、盛り上がる感じやから。
永野 ヨーロッパでも、たまにお客さんが全然笑わないステージあるけど、しんどいもん。
石田 燃えるんですって。「今日は客席15人です」って言ったら「よっしゃ!」みたいな(一同笑)。メンタル強いなあって思いました。
永野 素晴らしいなあ。男肉の熱烈なファンって増えてるからなあ。ハイタウンの(男肉 du Soleil の)『聖誕祭』の時でもねえ。
土佐 あー、怖いぐらい盛り上がってたなあ、あれ。
永野 あれ観て、ヨーロッパのお客さんが、そのまま流れてるって感じがした(笑)。
土佐 ごっそり取られていくって感じ、したもんね(一同笑)。

 

 

■「名古屋の芝居で、2012年上半期の“社長賞”をもらいました」(石田)

石田 で、1回目の男肉の前には、劇団アグレッシブ企画に出てました。
土佐 僕と酒井ちゃんと一緒に。
石田 僕は漫才師のマネージャーみたいな役で。あれは広島のタレントの中島(尚樹)さんと一緒だったけど、それまで舞台の芝居はやったことなかったらしいんですね。でもまあ、やはりズバ抜けて上手くて、芝居が。生の対応とか、舞台では先輩のはずの僕らと比べても、全然上手で。「うわあ、見習うべき所いっぱいあるなあ」って、勉強になりました…まあ、生かせてないけども(一同笑)。
土佐 広島で3人一緒に共同生活したりして。朝起きてから寝るまで、ずっと一緒。
石田 僕は楽しかったけど、部屋が寒かったですよね。あと、酒井君が発明を作るとか…夜中にインパクトドライバーで「ギュルルルル!」っていう音を出すのは、さすがに「ちょっと考えよう」と、注意しました(一同笑)。一番ノンストレスだったのはあいつです(笑)。
永野 それでアグレッシブが終わったら、男肉があって…。
石田 ハイタウン。僕は大歳(倫弘)君の『暗号コメディ』と、諏訪さんの『殺鼠コメディ』でした。『暗号』はすっごい笑いが起こる回と、全然ウケない回がありましたね。逆に『殺鼠』は毎回すごくウケてたし、評判も良かった。諏訪さんの可愛らしい感じが出てて。
土佐 黒木(正浩)さんがずーっと、諏訪さんにマンツーマンで演出されてたよね?
石田 黒木さん、本当に安定してない人なんで。多分1回も、ちゃんとできなかったです(笑)。台詞トチったりとか、小道具を置く場所間違えたりとか。
土佐 でも黒木さんは、あの不安定さが面白いからねえ。一人だけ質感が違う。
永野 生っぽいんよね。多分生っぽさが届くから、すごく観てられるというか。
石田 あれだから、諏訪さんだからできると思うんですよ。他の人が演出しても、全くできないだろうなあと思います。で、その後が、永野宗典不条理劇場ですね。その時期から、ずっと永野さんと一緒だったんです(笑)。
永野 そうそう。『ドラゴン青年団』も一緒やったから。
石田 でもそれ以上に、団長とずっと一緒だった(一同笑)。
永野 わー、そうだそうだ! 不条理劇場は、僕が台本にかかりきりだったから、団長と(望月)綾乃ちゃんのケアを、石田君がやってくれたんだった。
石田 そうそう、ご飯連れていったりして。
永野 本当に石田君キャスティングしてよかったなあと思ったよ、世話役としても(笑)。
石田 で、その後は名古屋で『リバースヒストリカ』って芝居に出ました。名古屋のイケメン演劇ユニットの「SCANP」っていう人らと一緒に。
永野 時代劇?
石田 時代劇ではないけど、映画サークルで戦国時代の映画を撮影しようって言ってたら、祈祷師の人が「時代物を撮るのなら、霊を降ろしてあげよう」って言って。それで明智光秀や織田信長が、本当に降りてくるっていう。
土佐 むっちゃくちゃ面白そうやん!
石田 もう、超エンタメ。で、彼らが暴れだしたから映画どころじゃなくなって、何とかそれを鎮めようと立ち向かう、みたいな。で、僕はブサイクなんだけど、森蘭丸役をやりたがってる人という役で。「蘭丸は絶世の美少年だからお前には無理だ」って言われてたのに、実際に森蘭丸が降りてきて「私は森蘭丸」って、急にカッコ付けた芝居をするようになる、っていう。
土佐 …再演希望(一同笑)。
永野 ヨーロッパのメンバーは、誰も観に言ってないんかな?
石田 観に来てないですね。吉田(オポス社長)さんだけ観に来て「上半期の社長賞を石田君にあげるよ」って、社長賞もらいました(笑)。
永野 社長賞の存在すら知らなかった!(一同笑)
土佐 誰も観てないのに社長賞(笑)。それ、男肉で体動かしてたのは役に立った?
石田 殺陣とかはあったけど…あまり役立ってはないですね。
土佐 僕ね、石田君男肉に出てから、体ぐんぐん弱ってるような気がする(一同笑)。
石田 いやあ、本当にそう。喉も枯れやすくなったし。
永野 吸い取られた?
土佐 体の節々が痛くなってることで、そっから…肉体からメンタルが弱くなってきてる。
石田 もうね、男肉が最たるアレだけど、本当に体張って、体動かしてみたいな仕事が多かったですね。もう来年は、シックな大人の会話劇みたいなのがしたいです(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■「幽霊は、役者たるもの誰しもがやりたい役でしょ?」(土佐)

 

土佐 僕は『ロベルトの操縦』直後は、アグレッシブ企画まで、特に何もなくて…あ!『鍵泥棒のメソッド』の撮影に行ってたわ。
石田 あー、そんな時期だったね。みんなパラパラと行ってて。
土佐 僕と石田君と、諏訪さんと角ちゃん。別で中川さんも行ってたか?
石田 「劇団オリエンタル企画」って、勝手に名乗って(笑)。
土佐 で、その後アグレッシブ企画やな。僕は幽霊役やったんやけど、幽霊役なんて、役者たるもの、誰しもが一生に一度はやりたい役じゃないですか?
石田 あ、そうなの?
土佐 ドリフターズ、ダウンタウン世代の僕らとしては、やっぱり松ちゃん(松本人志)、志村(けん)がやってきた幽霊役を。夢かなったなっていう公演やった。
石田 すごくわかりやすい、コントのような幽霊の格好をしてね。
土佐 それはもう、僕が「そうしてくれ」と。三角巾も付けて。
永野 憧れの三角巾を(笑)。
土佐 もうそれは絶対。(演出の)金井(大介/カナイマン)さんは渋ってましたけど。
石田 メイクも何か、渋ってなかった?「これやり過ぎやろ」みたいな。
土佐 顔真っ白に塗って、ほっぺた赤く塗ったりね。
永野 なんかそういう、やり過ぎぐらいにやってから調整する、みたいな感じだったの?
石田 そんなんだったかもしれませんね。最初の方は普通の会話劇みたいにやってたんですけど、やっぱり脚本が…本当にコントみたいな「面白い!」って感じの本だったんで。だったら、むしろもっとベタにやった方が面白いんじゃないか? とか言って、そういう方向にやっていってました。
土佐 まあアグレッシブ企画やって、その後イエティの第5回公演。僕、旗揚げから5回中4回イエティ出てるけど、この時にようやく大歳君のやり方というか、何かが決まってきたなっていう感じがして。それでやっと、イエティが楽しくなってきた(笑)。
永野 それまでは、理解できなかった所が?
土佐 理解できなかったというか、なかなかコンセンサスがとれなかったのがこの回ぐらいからようやく共通の言語が持てたなあと。
石田 僕は最初の方のイエティに出てたけど、最近は出てなくて、最近の公演あたりからコンビニのパンだとか、通販の商品とか、そういうジャンクなテーマを1本の芝居にするっていう路線になって。そういう所を攻めてる人はなかなかいないし、面白いなあと思いながら観てましたね。
土佐 意外とロマンチックやしね。『ブラッド&バター』も『ウイークポイントシャッフル』も、最後はいい話やったし。
石田 あー、そうだったかなあ? いい話とかそんなに、どうでも良くって…いや、褒めてんだけど相当(笑)。
土佐 で、次がハイタウン。それは(夕暮れ社 弱男ユニットの)村上くんの『変形コメディ』と、団長の『ヒップホップコメディ』。今年はいろいろ舞台やらせてもらったけど、僕『変形コメディ』が、一番楽しかったかもしらん。
永野 僕も出てたけど、確かにあれは楽しかった。しばらく引きずった、楽しさを。
石田 いや、観てても「楽しそうやなー」って思いましたもん。こんな風にリラックスして、舞台に立てるのは羨ましいなあ、って思いながら。
永野 演出とかも自由やったしねえ。
土佐 隙間が結構いっぱいあって、そこを稽古何回もやって、でも最終的にはエアリーに仕上げていくという。あれは良かったなあ。で、『ヒップホップ』はその真逆。団長は「好きにしてください。ただ、僕を笑わせてくれたらいいです」って…今まで会った中で、一番厳しい演出家やった(一同笑)
永野 要求が結構高いこと言うんやろ?
土佐 もう、自由という名の不自由を与えてくる(笑)。でもみんなが自由にやり過ぎて、くっちゃくちゃになった回があって「これ良くないなあ」って思った。そらそうよね。
永野 本当に村上君とは対照的だったねえ、それは。

 

■「客演先では、まず自分の居場所探しに必死になる」(土佐)

土佐 ハイタウンが終わって、その次が『逆境ナイン』。出てたのが本当にイケメンの、テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)とかに出てるような人達で。僕、そういうジャンルを今まであんま知らんかったんで、もうとにかく新鮮だった。もうみんな、ビックリするぐらい動けるんよ。多分アクションとかそういうのをちゃんとやってるから、バク転とかポーンとできるし。
石田 えー?!
永野 困ったねえ、それは。
土佐 野球の話なんやけど、僕なんかもうグズの役よ、断トツで。アクションシーンなんか振られんし、運動神経悪い方やから、もう。
永野 ヨーロッパ企画内ではいい方なのに。
土佐 全っ然話にならん。僕もう「動ける」なんて、一生言ったらあかんなあと(笑)。
石田 じゃあ立ち位置的にしゃあないから、一番おもろい奴でいようと?
土佐 そこ! そこだけは死守しようと(一同笑)。もう周りはみんな男前やから、その中で面白さだけは負けたらあかんと思って、稽古場で必死(笑)。わずかな自分のシーンを、もう手を変え品を変えて笑かそうと思って。
石田 ツイッターとか見てたら、やたら「土佐さん、土佐さん」みたいになってたもん。おもろいお兄さんになってんなあ、みたいな感じで。
土佐 で、それが終わってから、8月に劇団ニコルソンズの『グッバイ・エイリアン』。こっちは客演陣に、愛すべきおじさんたちがそろっててねえ。片桐(仁)さんとか、安田ユーシさんとか。やっぱり40歳過ぎて役者やってる人たちって、何もせんくても、にじみ出るモノが全然違う。
石田 あー、何か年上の人らと一緒にやるのはいいよね。ヨーロッパは同世代だし、客演先も後輩とかが多いし。
土佐 うん、一生懸命やってたら、そうなるんかなあと。生き様は非常に勉強させてもらいました。
石田 土佐さん、一人だけ変なキャラだったよね。
永野 稽古でできたような感じなの? あれって。
土佐 多分始め、(作・演出の)木下(半太)さんも、僕のことあんまりよくわかってなかったと思うんやけど。この中でどうやったらええんやろな? って時に、僕の中で何となく、諏訪さんイメージで…稽古場でエチュードっぽいことをやった時に、諏訪さんがやるようなことを試したら、まあ笑ってくれて。そっから上がってきた台本も、何となくそういう感じになってた。
石田 へー!
土佐 やっぱり外に(客演に)行ったらさあ、自分の居場所探し、まず必死になるよね。
石田 必死。必死になる。
土佐 うん。もう早めに出さんと、どんどん取られていくから。自分探しっていうか…「これやったら行ける」探し。それができんかったら、後から後悔することになるからね。
永野 で、その後がまたイエティ? Wキャストの。
土佐 Wキャスト…イヤやったなー(笑)。本多君の方が先やったからね。僕が先の方が、お客さんも2回楽しめたんじゃないかなあと思う(笑)。
石田 そうなの?
土佐 いや、本多君観てから僕の観たら、非常に味気なく見えるやろうなあと。全然モテへん奴が、その家の4人姉妹にだけはモテるっていう…ブサイクな奴が、カッコイイ役を演じるみたいな感じやったから。そういうのって、多分本多君の方がハマるやん?
石田 あー、なるほどね! それは確かにやりにくいねえ。
土佐 やっぱ本多君、狂ってるから(笑)。普通にやっても狂ってんのに、狂ってる役を狂ってる奴がやるから、それはもう、勝ち負けで言ったら勝てんやろうって。まあプレッシャーとかは別になかったけど、事故が重なって…指にヒビ入ったり、声枯らしたり。
石田 でもそれって、闇を抜け出す前の話でしょ?
土佐 そうそうそう。
永野 何それ? 大殺界みたいなの?
土佐 僕は行ってないんやけど『アグレッシブですけど、何か?』の企画で、運勢を占ってもらったらしくて。そしたら僕、この6年間、闇の中にいたらしくて(笑)。
石田 占い師の人が「いやあ、この人大変ですよ」って言ってましたよ。でも今年の11月に、ようやく抜け出せますとも言われて。
土佐 誕生日周期で変わるって、流れが。僕11月が誕生日だったんで、それを機に6年間の闇が明けたらしくて。その明けた一発目が、今回の本公演ってわけです。

 

 

 

 

 

■「劇性に走ったら、演劇警察に取り締まられた」 (永野)

 

永野 『ロベルトの操縦』のツアー中には、もうすでに『翼よ! あれが恋の灯だ』の脚本打ち合わせをやってたね。その締切が、ちょうど加藤啓アワーの頃で、さらにその頃には『タクシードライバー祇園太郎』のレギュラーも決まったから、いろんな台本作業がワーッとやってきた。
石田 永野さん、めちゃくちゃ書いてましたもんねえ。
永野 だから加藤啓アワーは、地獄の公演(笑)。内容自体も濃かったしね。(演出の)上田君が、普段ヨーロッパではやれないような…ミュージカルの手法を使ったり、笑いもヨーロッパとは違うテイストで。僕も全裸になったりとか、過激な劇ができてよかったと思う。不条理劇場で啓さんと出会って、そこからまた違う感じで進化した公演だったなあと。
土佐 でもすげー、啓さんと永野さんって似てるなあと思いますけどね。質というか、ズレ方というか、気ぃ合うんやろうなあって。
永野 あ、そう? まあ、確かに好きだもんね。言うこととか、センスとか。で、あの劇は男女関係の話というか…僕が女心でいろいろ考えていくような役やったから。そん時の役がちょっと抜けない状態で、その次のムロ式の台本書いたら、何かドロドロした恋愛物になった。男と女とロボットの三角関係の話。
石田 あれ、大竹まことさんが褒めてたらしいですね。
永野 そうそうそう。そういう嬉しい反応があったね。で、その頃には『堀江ブギーデイズ』の立ち上げもあって。読者モデルの女優さんとかと一緒にエチュードをして、シーンを作るみたいなのだったから、上田君と頻繁に関西テレビに行ってた。
土佐 僕もあれには出させてもらったけど。ほぼ本多君としか芝居してない(笑)。
永野 でもあれは、彼女らに楽しんでもらえるかっていうのが、とにかく不安だった。けど割と、ノリのいい方たちばっかりだったから良かったね。あのドラマは、上田君がようやく自分の好きなように、他の映像分野の人たちと仕事ができるようになったっていうか…関西でずっと活動していて、ようやく何か1個、作品が残せたんじゃないかって感触があった。で、その後の1月には(南河内万歳一座の)『青木さん家の奥さん』に、日替わりゲストで出て。男肉の団長と一緒に震えながら行ったけど、思いのほか楽しめた。
石田 エチュード芝居の。あれ、観れてないんですけどどうでした? メタに行きすぎて止められた、っていう話は聞いたんですけど。
永野 そうそう。「僕が書いた台本を、今みんな演じてるんだ!」みたいなアドリブを入れたら、バッと内藤(裕敬)さんに腕をつかまれて「軽はずみにメタに走るのはやめろ!」っていうニュアンスのことを言われた(一同笑)。枠の中でちゃんとやれ、と。
土佐 めっちゃ怒られてるじゃないですか!
石田 演劇警察に(笑)。
永野 いや、自分の持ち味が、何出したらいいんだろう? と思った時に…。
石田 「メタだ!」と。
土佐 作家に行ってしまったと(笑)。
永野 そうそう。「劇性で勝負や!」って行ったら、内藤さんに取り締まられて(笑)。
石田 『踊る大捜査線 THE FINAL』の撮影も、その辺でした?
永野 あれは3月やったんかな? 僕は(撮影)1日だけだったけど、ちょうど不条理劇場のチラシ入稿直前で、徹夜して行ったから、あんまり記憶になくて(笑)。
石田 僕は2週間ぐらい行ってたんですけど、その撮影の前日に、織田裕二さんが『UDON』を観てたらしくって。「あの運転手のちっちゃい子、今回も出るの? あの子本当に、ちっちゃいよねえ!」って話してました(笑)。本広(克行)監督が「同じ劇団のメンバーです」って紹介してくれたんだけど「ちっちゃいよねえ、あの子!」って(一同笑)。
永野 ちっちゃいしか言われなかったんだ(笑)。で、4月はハイタウンの練習しながら、『祇園太郎』シーズン2の撮影も始めて、不条理劇場の脚本も書くという、うっすらずっと忙しいみたいな状態になってた。
土佐 ハイタウンの『変形コメディ』の、あの家電の役は面白かったよねえ。
永野 今年に入ってから、役者よりも書く方の仕事が多くて「しんどいわー」って鬱々としてたから、あれでいい感じに発散できたんじゃないかなあ。今思えばだけど。

 

■「役者としての、戦う気力みたいなのが抜け落ちてた」(永野)

 

石田 で、その後は不条理劇場ですよね? あれは人形作ったりとか、段取りのこととかあるから、あんまり役作りとかできないまま本番に入ったんですよね。人形動かしながら演技するんだけど、つい人形の方に集中しちゃうから、いつもの役者の感じとも違う。それで永野さんに「役者としての演技と人形遣い、どっちに集中すればいいですか?」って聞いたら「うーん…どうしようねえ?」みたいな(一同笑)。もう一緒になって考えてて。
永野 そう、やっぱ役者としての自意識も芽生えてくるし(笑)。でも命を吹き込む様が、多分見せ物になるのかな? と思って。熱演してくれたらOK、って気持ちでいたと思う。
石田 でも永野さんって『祇園太郎』でも、割と細かい演出をしてくるんで、不条理劇場もそういう感じかな? と思ってたんですよ。でもアドリブとかもやるし、今まで永野さんが作・演出をやった芝居とも違う感じだったんで。それが今回、ビックリしましたね。
永野 まあ、人形劇っていうのもあったんだと思う。結構ふざけても、割とそこも楽しめるようになってんじゃないかなあというか。
石田 なんかそういう自由な演出というか…永野さん自身もちょっと、不条理まとってる感じでした(笑)。まあ、細かい所は細かかったりしたんですけどね。
土佐 あの芝居はみんな、普段の性格と逆の役ばっかりやったよね。石田君はあんまりしゃべらんし、綾乃もそんなお姫様タイプの子とちゃうけど、お姫様やったし。団長もグズでノロマな感じじゃないのに、そんな風になってたりして。逆のキャラを当てるのが好き?
永野 そうやね、違う一面を引き出したいという、単純発想。
土佐 で、その中で自分だけ…永野さんだけが、永野さんやんね(一同笑)。
永野 自分だけ客観視できてない。等身大の俺、っていう(笑)。でも不条理劇場は、これでしばらく休みだからね。「休もうか」と社長に言われました(笑)。
石田 そういえば、本多君に怒られたのってその時期じゃなかったですか?「役者の仕事を疎かにしてる」って(笑)。
永野 そうそう、酒飲んでて、からまれた。夏のムロ式の前に。で、その後に出た久ヶ沢牛乳は、久々に知らない方ばかりの所への客演で、相当ビビってたんよ。キャスティングから始まるような短編がいっぱいあったから、自分の役者としての面白さをアピールするって意識を持たないと、絶対いい役がもらえないという。さっき土佐君が「稽古の始めの方で仕掛けないかん」って言ってたけど、本当に仕掛けそびれてたなあ。なんか役者としての危機感というか、戦う気力みたいなものが抜け落ちていた。だから土佐君に相談してねえ。
土佐 あー、僕、メールで怒ったような気がするなあ。何て来たかなあ?
永野 「稽古怖いわー」ってメールをしたら…。
土佐 「稽古は殺し合いです。殺すつもりで行ってください」ってメールを、僕が送った(笑)。まあボケ半分、本気半分で。
永野 それを見て僕が「そうだったのか!」と(一同笑)
石田 100%の本気で受け取ったんだ(笑)。
永野 まあでも、結局苦手なもんは苦手なままやったし。何か「ブレスの位置が変だ」とか、役者としての基本的なこともすごく指摘されて、ウワーッてなってた。もう自分が、役者としてどんだけ不器用なのかと…まあ、そこら辺も面白がられてはいたんだけど。とにかくもう、初心に帰るような公演だったね。役者として攻めて行かないかん、頑張らないかんと、いろいろ考えさせられたから。

 

 

 

 

■最後に:今後ヨーロッパ企画で生かしていきたい経験は?

石田 僕はでも本当に、動きかもしれないですね。本当に1年を通して、体を使ってたんで。『月とスイートスポット』でも、役名がチェンって、男肉メンバーの名前だし(笑)。実際今回は座ってるだけの役の人が多いから、その中で僕だけピョンピョン動いてるよう、心がけてやってます。
土佐 何かねえ、もうワガママにやっていこうと思う。もう35歳を超えたし、闇を抜けたことだし、もうちょっと周りを気にせずにやっていこうかなと。自分のことだけ考えて、厚かましく行ったろうかなと思います。
永野 僕は逆に今、闇に突入したのかもしれない(一同笑)。改めて役者として、悩み始めたばかりだからねえ。作家と役者の両立が、上手いことできない自分が歯がゆくて。今一度、役者としての舞台上の楽しみ方っていうのを、日々見つめ直しながら取り組んで行こうと。再度、役者・永野宗典と向きあうという心づもりでいます…という締めでいいですか?(笑)

 

 

 

【質問:今、一番漂流したい所はどこですか?】
《石田》 
静かな温泉街を漂流したいですね。城崎とか、岐阜の方とか。いろんな日帰り温泉に入って「ああ、いいなー」「ここもいいなー」とか言って。もうね、とにかく体を癒したいです(笑)。

《土佐》 
スペインかなあ。カルメンを踊りに行きたいですね。あとはリオとか…うん、世界の祭りを回りたい。トマト祭りとか。ちょっと突き抜けた感じに、自分を持っていきたいんで。

《永野》
街をぷらぷらというか…ショッピング漂流がしたい(笑)。新京極の服屋に、服を買いに行きたいなあと。チラホラは行くんですけど、あんまり落ち着いては行けてなかったから。ゆっくりね、服を選びたいです。

<インタビュー:吉永美和子>