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およそ1年ぶりとなるヨーロッパ企画の本公演。この1年間、ヨーロッパ企画メンバーがどこにいて何を考えていたのか。お互いにつかず離れず動いていた1年間を振り返ります。

 

酒井善史×諏訪雅×西村直子編 石田剛太×土佐和成×永野宗典編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■「MONOの公演では、足のことはずっと隠せると思ってた」(中川)

 

中川 『ロベルトの操縦』が終わったら、すぐ京都ニューシネマがある予定やったんよ。だけど『祇園太郎』のレギュラーが決まったから、それが延期になって(笑)。ほんで俺、急に暇になったんだよ。
本多 あ、そうだ!『ムロ式』の仕込みとか、手伝いに来てくれてた。
中川 だからもう、年末のカウントダウンまで、何やってたかの記憶がないなあ。
本多 中川さんが舞台から落ちた事件ですね。
角田 あれ、僕が犯人と言われてるけど、本当は本多君が押したんです。
中川 …犯人2人おるで、ここに! 戦犯2人!!(笑)
本多 いや、押してないですよ! あれは中川さんが目隠しして、何かスイカ割りみたいなことやってたんですよね?
角田 「ミカン刺し」ですね。
本多 それでみんながすごい指示を出しすぎて、中川さんが「何やー?!」ってなった時に、僕がパーンと叩いたんですよ、確か。それで中川さんがバーって暴れ出したんですけど、みんなそれでちょっと引いて、そこに空間ができて…はい(笑)。
角田 本多君、一番笑ってたからね。
本多 舞台と客席の高低差が結構あったんですけど、中川さん、舞台から見えなくなる瞬間まで、ファイティングポーズ取ってました(一同笑)。
中川 みんなもう、馬鹿にしてるな。
本多 でもその日のイベントでは「お客さんに不安を与えたらいけない」というので、お客さんにはわからないように振るまってんですよ。すごいですよね?
角田 僕らもだって、同じ舞台に乗ってても、そんな重症やってわからんかったもん。中川さんの役者根性が、一番輝いたイベント(一同笑)。でもその後のMONOの稽古では、最初隠していたんでしょ?
中川 隠してたねえ、ずっと隠してた。諏訪さんにも「絶対言うなよ!」って言って。
本多 (詰問口調で)隠せると思ったんですか?
中川 思ってたんやけど、しばらくして「何かおかしいな」って感じになっていって。
本多 そりゃそうですよ。誰が一番始めに気づいたんですか?
中川 水沼さんだったと思うんだよな。喫煙所が稽古場から遠くて、いつも一緒に行ってたんだけど、その帰り道で、毎回俺が遅れて来るから。
本多 あ! そうでしたそうでした。イエティで稽古場が隣だったんですけど、中川さんだけが通るのわかったんですよ。足にね、鉄球巻かれた人みたいな歩き方になってたから(笑)。
中川 で、とうとう「病院に行ってください」と言われて、検査を受けたら靭帯切ってて。で、土田さんにそれを伝えたら「わかった。でも全然大丈夫。全然問題ないから」って言って、(台本)直してくれた、全部。足が不自由な人って設定に。土田さんすごいね。
本多 僕最初、諏訪さんと中川さんが、仲がいい役をやってたから「何や、おかしいなあ?」と思いながら観てたんですけど、途中からそういうの捨てて、劇の内容に集中して観たら「いい関係性やなあ」と思いました。
中川 …全然集中してない(一同笑)。
角田 僕もMONOは観ましたけど…全く同じ感想(一同笑)。
本多 いやいや、おかしいやろ!
中川 お前は本多ではないんだから、全く同じって。
角田 いやでも、どんな感じやったかな…うーん。でも別に、中川さんとか諏訪さんとか、あまり意識してなかったけどね。MONO自体が初めてやったから「こういう感じのお芝居やねんなー」と思って観てたなあ。
本多 …いや、全く違う感想やん。
中川 そうやな、一切かぶってない。
本多 それが終わってすぐ『リリオム』に行ったんでしたっけ?
中川 そうやな。4月には東京に行ってた。だからハイタウンも出てない。
角田 ショートショートムービーフェスティバルのイベントの時に一瞬帰ってきてたけど、それでまたすぐ東京に?
中川 いや、帰ってきたのはハイタウン観るためじゃなくて…いや、思い出した! 俺、12月に何やってたか思い出したわ。ハイタウンの時に上映した、CO2の映画(『治療休暇』と、柴田(有麿)君の映画(『ONE PIECE』)に出てたんだ、俺ずっと。そのアフタートークが(ハイタウンで)あったから、そっちがメイン。
本多 いいじゃないですか。「ハイタウン観るために帰ってきた」って言ってもいいじゃないですか。寝過ごして観に来んかったですけど(笑)。

 

■「少年王者舘の舞台は…ただただ、幸せだった」(中川)

中川 それでその後『リリオム』か。
本多 僕は観ました。いや、面白かったですよ。
中川 終わった日に一緒に下北ハウス泊まって、ダメ出しされたな(笑)。
本多 いやいや、中川さんが聞いてきたから。そりゃあそんな、後輩が出しゃばって言わないですよ、そんなこと。僕から言ってないでしょ?
中川 うん、俺から聞いたんだよ。でも聞いたら、マジのダメ出しされた(一同笑)。そんなんさぁ、軽く褒めてほしいやん?「面白かったですよー」で、いいやん?
本多 それは…それは! いや、中川さんこのままよりも、もっと良く見えた方がいいなあと思ったから。そういうのって、劇団員しか言えないじゃないですか? で、夜中。下北ハウス…そのシチュエーションが、そうさせたんでしょうねえ(一同笑)。
角田 きっついダメ出しが?
中川 キツくはないけどね。
本多 でもその後、演出の松居(大悟)君に聞いたら「昨日、本多にこう言われたんだけどさあ…」って、僕の名前ガンガン出してたって(一同笑)。
中川 それは言うよ。
本多 いやそんなん、おかしいでしょ! そこは伏せて、普通やるやつやろ(笑)。
角田 それで演出が変わったとか?
中川 いやいや、誰も何も変わらないんだけど。ただ、結構大変な舞台だったね。TVの人もいれば、モデルの人もいて、小劇場の人もいてって、いろんな考え方の人が集まっていたから。でもまあ、すごくプロデュース公演って感じがして、面白かった。
本多 二役やってましたよね。
中川 現世の話と死後の話っていうのが半々ぐらいで、こっちの役の合わせ鏡みたいな役をやるって感じだった。
角田 あ、じゃあみんな二役で?
中川 いや、メインの役者は1人の役だったね。で、それが終わってから少年王者舘の『累-かさね-』
本多 あれはねー、本当に高校生の時から好きで観ていた劇団に、同じ劇団のメンバーが出るっていうので「うわー、やりおったあ! 俺も出たかったー!!」って感じでした(一同笑)。それこそ本当、感慨深かったですねえ。
角田 僕も観ましたけど、全然前情報知らなかったから…中川さんむっちゃもう、主役やって(笑)。すっごいなあ、大変やろなって。むっちゃ踊るし。
本多 あ、踊りキレありましたよね。ほんま去年、男肉(du Soleil)に客演してて良かったですよねえ? いきなり王者舘やったら、多分やれてないって言ってたじゃないですか。
中川 うん。踊れないとは思わないけど、客前でダンスを踊る感覚っていうのが、男肉出るまではわからなかったから。
本多 確かにねえ、わかりませんわ。
中川 「あ、こんなに振付を忘れるんだ」「こんなにも芝居が疎かになるんだ」っていうのを、何回も経験したし。こういう風に芝居もダンスも変化していくんやっていうのを、やった上での王者舘だったからね。そこにあんまり不安はなく、踏まえてできたって感じがあったから、すごくやっといて良かったと思った、男肉は。
角田 でも男肉は力技でできるだろうけど、王者舘は…。
中川 ああ、全然ちゃんとしてるから。手の上げ方の角度まで、厳しく言ってくる。
本多 厳しいんだ。
中川 厳しいよ! 10何人出てるダンスのシーンでも「じゃあ、3人ずつ踊ってみて」って言われて、踊ってからすっごくいろいろ言われる、みたいな(笑)。
本多 でも、それだけやるからあんだけの、ねえ。ホンマ中川さんが出たから、ああいう内容になったんやろなって公演やったです。
角田 そういえば、王者舘はどういうきっかけで出ることになったん?
中川 仲良くしてるメンバーの人と呑んでる時に「いつか出たいわあ」って言ってたら、それが(天野)天街さんの耳に入って「じゃあ、次の公演出てよ」みたいな感じに。
本多 で、実際に出てみてどうでした?
中川 いやあ…幸せやったね(一同笑)。ただただ、幸せだった。天街さんって、人を喜ばせるフレーズがめちゃくちゃ上手いからね。人たらしなんだと思う、あの人本当に。だから「天野さんのためだったら」って思う人が、周りにいっぱいいるやん?
本多 任侠の世界ですね(一同笑)。
中川 いやいや、そういう風にしちゃったらお前(笑)。まあでも稽古期間中は、高校卒業以来(名古屋の)実家に1ヶ月半ぐらい住めたし、いろいろと楽しかった、本当。
本多 それでようやく、延期になってた「京都ニューシネマ」が。
中川 でも僕は全然、内容にはタッチしてないから。司会だけ。
本多 でも年明けには、またダンスの公演があるんでしょ? ダンサー目指すんですか?
中川 いやあ、目指しはしないけど(笑)。でもそれも、楽しみだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■「加藤啓アワーでは、すごく簡単なギター演奏に挑戦したけど…」(本多)

 

本多 僕は本公演が終わってすぐ、加藤啓アワーの稽古に入りましたね。
中川 あれ、内容はよく覚えてないけど、ずっとみんなフザけてたって印象やなあ(一同笑)。
本多 台本はすごく早めに上がってたんですけど、それをどういう風にするかっていうのを、直前までずっと探りながら稽古やってて。最終みんな歌を歌う、楽器弾く、みたいな。そういう芝居になってたんじゃないかなあ。
中川 本多君も、なんかギター弾いてたっけ?
角田 え、ギター弾けんの?
本多 いや、弾けへん。だからすごく簡単な、2つの弦だけを「1、2、1、2」で弾くみたいな…コードとも言えへんような、ベースみたいな(笑)。
角田 単音だけの(笑)。
本多 それがまた、稽古の時にはできても、やっぱ本番になると楽器はできないんですよ。
中川 できへんよねえ。
本多 そりゃ役者も本番ではミスしますけど、でもそれより難しかったです。
中川 『(タクシードライバー)祇園太郎』の撮影も、ちょうどその頃じゃなかった?
本多 あれは永野さんとか、角田さんが中心にやってるから。僕は声の出演というか…まあ、手伝いです(笑)。
角田 でも本多君いなくなったらねえ、どうにもならないから。
本多 いやでも、「別に祇園太郎が出えへん回を作ってもいいか」みたいな話も出てるからね(笑)。で、年が明けてからイエティ『ブラッド&バター』の稽古ですね。僕初めて出させてもらったけど、(作・演出の)大歳君のやり方に慣れてへんかったりとか、(共演の)かもめちゃんとも打ち解けなあかんしとか、いろいろ大変でしたね。
角田 でも別に、本多君が初めてだからどうとかっていうのは、そんな感じもしなかったけどね。ヨーロッパメンバーばっかりやから。
本多 うん。でもとにかく、かもめちゃんの心を開かそうと、皆で試行錯誤してました。
中川 でけんかったんやろ?
本多 そうですね、結局。「人と打ち解けるのに1年かかる」って言ってましたから。
中川 そら無理や(笑)。
本多 それで5月にハイタウンがあって。僕は諏訪さんの『殺鼠コメディ』と、大歳君の『暗号コメディ』に出ました。あれはもう、喉がガラガラになったって記憶しかないですねえ。『暗号』では叫びまくってたから、みんな。
角田 そんなにやったっけ?
本多 いや、稽古か何かで、むっちゃ「ワー!」とか言ってて、始め。それで休演日の間に、何かの撮影に行ったら「声出ぇへんな」みたいな話になって。で、ステロイドを飲んだ思い出があります(笑)。で、その後は、ムロ式は7月からだったから…あ、『ドラゴン青年団』やってましたね。その時僕だけ空いてたんですよ、多分。他のみんなは舞台とか、いろいろやってたから。
中川 ヨーロッパ企画を代表して。
本多 いやもう、プレッシャーでしたよそら、はい。
角田 本多君は仕事を相当選んでるからね(笑)。ギャラの高そうな。
中川 まず、ギャラの交渉から入りますから。単価いくらだとか。
本多 選んでませんよ! ギャラなんて聞いたことないし!!
角田 だからもう今、芸能人って感じしますもんね。
中川 僕らも会うとちょっとやっぱ、緊張しますしねえ。着てる物もおしゃれやし。
本多 普通ですよ、普通。
角田 金回りいいもんな。
中川 引っ越した先も、いい所住んでるしねえ。僕同じ所に住もうとしたけど、結局住めなかったですからねえ。やっぱ家賃考えたら、しょうがないなあって。
本多 いやいや、学生しかいないですよ!(笑)

 

■「『ドラゴン青年団』は、上田君の感じが出るよう気を使ってた」(本多)

 

中川 まあでも『ドラゴン青年団』は、結構大変だったんじゃないの?
本多 脚本は上田君やけど、出演者はみんな違うジャンルの人たちだし、監督は違うしで。その中で、なるべく上田君の書きたかったことの感じが出るように、いろいろ合間にしゃべってたりはしてたんですけど。でも僕、そういうTVドラマに全然慣れてないから、(他の役者に)かぶったりとかすごくしてて、それはすごく注意されましたね。
中川 そうそう。『曲がれ! スプーン』の時も思ったけど、難しいんだよね。ただの映像作品に出るのとは、全然話が違う。
本多 まあでも、役者の人らとも、スタッフさんとかも、みんなすごく仲良くなって。それでヨーロッパ企画に興味を持ってくれる人も結構いたんで、『月とスイートスポット』は結構来てくれると思う。それでみんながヨーロッパ観てくれて、他の現場でメンバーに会ったら、お互いやりやすくなるでしょ? ペースがわかるというか。そうやっていろいろ、広がればいいかなあという感じですね。
中川 …偉い。
角田 偉いなあ(笑)。背負って行ってるからねえ、やっぱ。
本多 まあまあ。で、その次がムロ式なんですけど…あ、12月にもやってたか。ただ夏の公演は、作品を書かなかったんで。それまでのムロ式では、いつも短編を書いていて、毎回「書けへんー!」ってなるんだけど、今回は過去の作品をやったんで。だから取りあえず、役者だけに集中できましたね。
角田 ムロ式は観ましたよ。あれは(上演時間が)長かったのと、あとセットが何か、面白かったね。(文字を壁に)書いたら消える、みたいな。
中川 あとオープニング映像がすごいよね、毎回。
角田 あーそうそう。おっしゃれな感じで。シュッとした感じやもんね、全体的に。パッケージがね…チラシとか。
中川 大阪公演とか、前売が即完だったらしいからね。
角田 『ドラゴン青年団』人気で?
中川 「タモツや!」みたいな。
本多 いや、『ドラゴン青年団』まだ放送前やったから(一同笑)。で、その後がイエティ『ウイークポイントシャッフル』ですね。Wキャストで。初めての経験だったから、周りがやりにくかったりしないかなあ、って思いました。
中川 でもまあ周りがねえ、やりにくいやろなあ。
角田 まあ、後の方の人が大変でしょ。土佐君が。いろいろ身体に異変が…不調をきたして。多分メンタルから来てる(笑)。
中川 本多の後やもんね。
角田 本多がやり散らかして、商業演劇の方に行ったから(一同笑)。
本多 いやいやいや、商業じゃないし! バリバリ小劇場ですよ!! はえぎわ(http://haegiwa.net/)(『ライフスタイル体操第一』)は。
角田 はえぎわでは、むっちゃ楽しそうにしてるっていう噂はあったよ。本多、どこよりも一番、あそこが楽しかったんじゃないかって(笑)。
中川 いつもの「楽しそうなフリ」じゃなく、本当に楽しかったんやね?(一同笑)
本多 ああ、本当に楽しかったです。本当に楽しかった。一緒にやった人たちが、みんないい人やったのが大きいですね。60歳ぐらいの人もいっぱい出てたから、なんか家族みたいな雰囲気で。お父さんお母さんみたいな感じで「いやあ〜、台詞覚えたの? すごいねえ」とか(一同笑)。
中川 いいよねえ、そういうのは。
本多 最初の方はヨーロッパみたいなエチュードをしたけど、途中から一切せず、台詞を覚えるための自主稽古みたいな感じになって。みんなで何回も何回も繰り返して。覚える作業っていうより、芝居を固めるって作業。それはヨーロッパには、あまりないですよね?
中川 うん「芝居を固める作業」ってしないもんね、僕ら。
本多 でも本当、今年はいろんな所でいっぱい知り合いができたから、その人らが(本公演を)観に来てくれる、それがもう、楽しみですね。

 

 

 

 

 

■「『祇園太郎』は、何もノウハウがなくて大変だった」(角田)

 

角田 『祇園太郎』のレギュラーが(昨年の)10月の頭に決まったから、本公演後はすぐに(人形作りや撮影に)取りかかってたね。まさか決まると思ってなかったから(一同笑)、その後の予定を何も考えてなかった。
本多 僕も永野さんも、加藤啓アワーに出てましたからねえ。
角田 だからその間、僕が人形(作り)と絵コンテと撮影と、全部やってた。
中川 『祇園太郎』って、どういう役割分担してんの?
本多 全体を取りまとめているのは永野さん。まずそれぞれの人に脚本を頼んで、それを永野さんがチェックして、角田さんと人形の打ち合わせをして。監督は、角田さんが前半をやってましたよね?
角田 1話から6話まで。
本多 それで中盤は(山口)淳太(ヨーロッパ企画映像スタッフ)がやって、残りは永野さん。絵コンテはそれぞれの監督が考えるけど、人形はずっと角田さん担当です。あれって、1話でどれぐらいかかるんですか?
角田 人形? 人形は、もうホンマに回によるけど、絶対ゲストは1体出てくるから。それを方向4つ分、作らんとあかんし。
中川 あー、四方向作らんとあかんのか。
角田 どう使うかわからんから、一応右、左、後ろ、正面の4つを作っとく。あれは人形作りも結構大変だけど、撮影の時に、人形と実景とのバランスを取るのが大変で。
本多 人が写っても良くないしね。やっぱり人形とのバランスがおかしくなるから。人が入っちゃって「わああ!」ってなったり…人NGが。
角田 それと(人形が)ちっちゃいから、ちょっと動かすだけで、ギュン! って動きになったり。あっという間に画面から消えちゃったりするから。もうホンマ、意外と大変やったね。全部手作りやったし、何もノウハウがないところから始めたし(笑)。
本多 その手間のかけ方も、合ってるかどうかわからんし。
角田 まあ今は、やろうと思えば1日で撮れるぐらいにはなったからね。相当綿密に計画を立てないといけないけど。
中川 でも今や、シーズン2に突入やん?
本多 おかげ様で。
角田 ねえ、本多人気もあるから。
本多 …死ね!(一同笑)
中川 それで角ちゃん、1月に舞台やったでしょ?
角田 あ、そうそう。1月の終わりに『拡散していく、彼女』。それは珍しく、役者で呼ばれて…最初はお手伝いと思ってたんだけど(笑)。
本多 脚本もクレジットされてましたよね?
角田 それはほとんど、(共同脚本の荒川ヒロキさんの)話を聞くぐらいの感じやった。
本多 僕観に行ったんですよ。面白かったですね。角田さんが初めて心開いて演技してる! って(一同笑)。それがなんか、突然泣けてきそうになって。こんなに…って、それさんざん言ったと思うんですけど。
角田 さんざん言われたなあ。
中川 今も何か、涙目になってるし!(笑)
本多 いや本当に、これ出てよかったな、角田さんって思って。ホンマに。
角田 感動したんかなあ、そんなに(笑)。でもまあ、そんなになんちゃあない、オフィスの話だったんだけど。でもスタッフさんも含めて少人数やったし、怖い人もいないし。共演も可愛い女の子やったから、現場がやりやすかったっていうのが大きかった。
本多 ヨーロッパは男ばかりだから、女の子が多い現場っていいですよね?
角田 女の子…まあ、そうですね。女の子…まあ、そうですね(一同笑)。
本多 (ライターに向かって)今の、きっちり2回入れといてください(笑)。で、その時の主人公が、(前回の男肉 du Soleil公演に出演した)中村優ちゃんだったんですよね。
中川 それが中村優ちゃん?! そうだったんだ!
角田 そっから(男肉に)つながったわけで。

 

■「かせきさんのMVは、ちゃんと音に合わせて作ってたよ」(角田)

 

本多 で、その後にイエティがあったんですけど、角田さん後から合流しましたからね。まさかの角田待ち(笑)。
角田 マジで?! そんな時期あったんや!(笑)で、その次は…ハイタウンか。僕は男肉の団長(池浦さだ夢)の『ヒップホップコメディ』と、上ちゃん(上田誠)の『気象コメディ』に出てた。あと「カフェ・ド・念力」のイベントとかもやってたから、あまり他のものは観れんかったなあ。
本多 『ヒップホップコメディ』は面白かったですよね。
角田 楽しかったねえ。好き勝手にやったんで(笑)。好き勝手にやり過ぎて、団長と山本(真由美)さんが怒ってんじゃないかな? と思って…未だに聞けてないけど(笑)。
本多 怒っててほしいなあ(一同笑)。
角田 それでハイタウンが終わってからは…あんまり記憶ないなあ。
本多 『お母さんね〜、お!』のイラストとか?
角田 あー、なんかそういう、チョコチョコした作業を…作業なんかな?
中川 『祇園太郎』のシーズン2とかは?
角田 あー、(放映が)決まったのは最近やけど、先に作り始めてたからね、勝手に。そんな作業とか、打ち合わせとか。それで8月にイエティの『ウイークポイントシャッフル』の稽古が始まって…。
中川 「京都ニューシネマ」の作品作りもしてなかった?
角田 ああ、みんなでかせきさいだぁさんのMVを勝手に作るという。僕は『ソーダフロートシャドウ』のMVを撮ったけど、あれも何かの合間に、1日で撮ったような…あれ何の合間?
本多 イエティの東京(公演)と大阪(公演)の間とかじゃない?
角田 あー、そういうことか。
本多 あの作品、グランプリを取りましたよね?
角田 そうそう。賞を争うとかね、全然聞いてなかった(笑)。みんなでワイワイしゃべれるような物を撮ろうっていう感じで作ってたから。いや、嬉しかったよ。かせき(さいだぁ)さんに観てもらって、一位に選ばれて。
中川 ショートショートムービーフェスティバルで撮るようなのとは、やっぱり違う?
角田 ああ、音楽に合わせて作るっていうのが…あのヒップホップ好きの、男肉のK(高阪勝之)君だけが指摘してくれたんよ。僕のが一番、ちゃんと音に合ってたって。
本多 それが一番嬉しかったこと?
角田 うん。バカな作品に見えるけど、そこはちゃんとしたんで。それをK君が指摘してくれたのは嬉しかったね。まあでも全体的には、今年は細々とした活動してたかなあ。
本多 でもイラストの仕事しながら、役者の仕事もして…。
角田 まあ役者って言っても、ヨーロッパを知ってる人が呼んでくれたりとかしたら、って感じ。別に何か、どこか他所に行ってやりたいとか、そういうのは特別…「役者」って言って呼ばれると僕、その状況に笑ってしまうしね。ずっと半笑いでやってしまうから(笑)。
中川 …その半笑いが、ちゃんと撮られてるからね、お前(一同笑)。

 

■最後に:今後ヨーロッパ企画で生かしていきたい経験は?

 

本多 何やろう…生かせるとかあまり、ないですよね?
中川 経験持ち帰るとか、あまり関係ないものね。でも持って帰るというよりは、ヨーロッパ企画の人間である僕が、『リリオム』だったりMONOだったり王者舘に出て、そこで観た人がまたヨーロッパ企画に来た時に「全然違うなあ」と思ってもらいたいなあと。僕は外では、全く違うことをやるように心がけてるから、それは多分、面白いことだと思う。
本多 ねえ、あまり「(外で何かを)得たい」って気持ちで行ってないじゃないですか? むしろ観た人が何かね、ちょっと「変わったな」って言ってくれたら(笑)。具体的に「何が」っていうのは、言えることじゃないですけど。
角田 僕はもう、楽しみやけどね。この3人だけじゃなく、石田君とか土佐君とかも、いっぱい客演してるんで。その人らが持ち帰ってきた物を、僕が勉強させてもらおうかなって感じで(笑)。本多君とか、だいぶガラっと変わってんじゃないかな?
本多 そんなに変わんないですよ! だって13年ぐらい(役者)やってても、あんまり変化ないんですから(笑)。

 

 

 

【質問:今、一番漂流したい所はどこですか?】
《角田》 
海に行きたいですね。今年の夏は海に行けてなかったから、キレイな所ならどこでもいい。またサーフィンやりたいんですよ。『サーフィンUSB』の時に体験したのが、すごく楽しかったから。僕、両足つってもやってましたからね。

《中川》 
どこって言うんじゃないけど、最近ヨーロッパ企画って、あんまりワゴンで移動しないじゃないですか? またあの時みたいにみんなで車に乗って、SAに寄ったり、どこに泊まるかもわからない感じでフラフラしたいなあと…でも免許持ってないからなあ、俺(笑)。

《本多》
四国ですかねえ。四国って、香川と愛媛しか行ったことないから。福岡の人に「高知がすごくいいよ」って聞いたから、その辺。あと徳島と…お遍路じゃなくてもいいから、すごく行ってみたいですねえ。


<インタビュー:吉永美和子>