ギョエー!旧校舎の77不思議

  • 中川 × 金丸 × 日下 × 納谷

::: 対談企画1 :::

中川晴樹 × 金丸慎太郎 × 日下七海 × 納谷真大

NAKAGAWA HARUKI × KANAMARU SHINTARO × KUSAKA NANAMI × NAYA MASATOMO

劇団員の皆さんは、稽古の一発目からバランスが絶妙。

中川 今回は愛媛のチンピラと、富良野のヤクザと、京都の花という組み合わせで(一同笑)。しかし見事に、いろんな世代がそろった座組ですよね。ヨーロッパ企画は僕を含めて、全員が40代だし。

納谷 僕が50代で……。

日下 私は20代ですね。

金丸 俺と亀島(一徳)さんは30代で、俺と(祷)キララちゃんがキレイに干支が一周してるんですよ。

納谷 19歳だからねえ。すごいなあ、50代から10代まで。

中川 日下さんは「安住の地」って京都の劇団にいるけど、どういう芝居してるの?

日下 作家が2人いまして、一人は舞台効果や絵で見せる演出を得意として、もう一人は作家志向でキッチリ戯曲を書いてます。私は昔から、体を動かす系の芝居を結構やっていて……コンテンポラリーダンスの舞台や、維新派に出演したりしてました。だからヨーロッパ企画みたいな群像会話劇は、あまりやったことがなかったかも。

中川 納谷さんは札幌で「ELEVEN NINE」って劇団をやってますよね。

納谷 そうです。家は富良野にあるんですけど。感動的なドラマから、有名な映画を舞台化した作品までいろいろ作ってますが、コメディの要素は絶対外しませんね。どんなシリアスな芝居でも、笑いが作用・反作用としてあった方が絶対いいので。

中川 で、金丸は何で芝居を始めたんだっけ? そういえば聞いたことなかったわ。

金丸 最初は自分で劇団を作って、作・演出もやってたんですけど、その舞台を観てくれた人たちから、客演のオファーが来るようになったんです。そしたら「こっちの方が楽しい」ってなって、俳優だけやるようになりました。

中川 どんな劇を作ってた?

金丸 下ネタしかやってなかったですね。マッコウクジラ並みの潮吹きをする女の話とか。

中川 ……面白そうやけどな(一同笑)。エチュードでの稽古は、納谷さんと日下さんは初めて?

日下 そうですね。最初は本当に「言葉のストックないわー」ってなってました。しかも私は「ヤンチャな女子高生」という設定だったけど、自分にヤンチャな経歴があまりなくて(笑)。でもヨーロッパの皆さんの演技に乗っかるようにしたら「あ、こういうのでも行けるかな」という発見があって、次第にいろいろ出せるようになりました。

納谷 僕は(昔所属した)「富良野塾」でもやってましたけど、ヨーロッパの皆さんの語彙力や対応力のすごさには、最初若干気圧されました。特に一番最初の稽古のエチュードは、まだ「全員先生役」ぐらいしか情報がなかったのに、みんなのバランス感覚がすでに絶妙で、すごく面白かったのが印象に残ってます。

中川 あのエチュードには僕も参加してたけど、一発目のエチュードに呼ばれるのはめちゃくちゃ緊張するんです。「ここから始まるよ」というのに選ばれるのは。

金丸 作品の基礎づくりですもんね。

中川 正直「選ばれたくない」って思う(一同笑)。

納谷 実際皆さん、ちょっとピリッとしてましたからね。金丸君は少し遅れて稽古に合流したけど、最初のエチュード見た時に、割と度肝抜かれました。

日下 そうそう、すごかったですよねえ。「ヤバイの来た」って思いました(笑)。

金丸 いやいや、バイアスかかってるでしょ? でも今回は「四度目の出演だからこうしよう」とか、何も考えずにやろうと思ったし、実際そうできたんじゃないかなと思います。

ヨーロッパ企画の爆笑には、異様な高揚を得られます。

金丸 納谷さん以外の客演は、全員生徒役になりましたね。

納谷 僕は教頭ですけど、それは最初の段階から決まってたみたいで。

中川 で、僕は体育教師。こういうわかりやすいグラデーションがある状態って、あまりなかったね。今までは割と全員が、立場も年齢も横並びのことが多かったから。でも今回は、上下関係や世代の違いがあって、その間でのやり取りがやっぱり新鮮。これはメンバーだけでは絶対できないことだから、すごくありがたいなあと思ってます。

金丸 そうですね。『ビルのゲーツ』(2014年)も、俺だけちょっと年が離れてたけど……。

中川 立場としては、皆と同じだったからね。それと笑わせる方向が、単純ではない感じが……熱っぽく演じることや、ものすごく怖がってることが逆に笑いを生むとか。ただボケてツッコめばいいってわけじゃない所が、いつもと違う感じがするんだよね。

金丸 そうですよね。ツッコミがそんなにいないって印象ありますよね。

中川 ボケしか舞台上にいない(一同笑)。

日下 とはいえ最初の方は、普通に怖いですよねえ。

納谷 上田さんは「最初の方だけで、あとは怖くないんだよなあ」って言ってました(笑)。

金丸 それでいいんじゃないですか? ずっと怖かったら、お客さんずっと笑わんくなるやろうし。怖さと笑いを割合にしたら……1対9ぐらい?(一同笑)

日下 あとは青春が4とか。青春の要素は、結構多いですよね。

中川 そうそう、普通に青春学園モノ。恋愛があったり、進路の話があったりとか。そういう青春ドラマに、怪異という要素を一個乗っけるということだと思う。

納谷 僕、ホラーとコメディは対極にあると思ってるけど、オカルトとコメディは共存できるんだなって思いました。オカルトは、少し角度を変えると笑えるんですよね。「こっちの角度から見たら、面白く見えますよ」という、その角度の付け方が上田さんはすごく上手いし、しかも一つの劇の中で、それをいろんな角度から見せようとしている気がします。

中川 ただ本当に笑えるかどうかは、(取材5日後の)プレビュー迎えてみんとわかんないですね。

日下 私、お客さんの反応がちょっと怖いんですよ。安住の地は、そんなに笑いがある劇じゃないから、笑い声にビビるんじゃないかな? って。

金丸 異様な高揚を得るよ、ヨーロッパの爆笑って。俺も『ビルのゲーツ』で初めて出た時「何でこんなにまっすぐなコメディに、今まで出えへんかったんやろう?」って悔いるぐらい、楽しい体験やったから。だからビビる必要ない。

日下 だとしたら、終わったらルンルンになるかもしれないですねえ。

金丸 プレビューが開けるたびに「やっぱ天才やなあ」って思うんです、上田さんは。稽古を重ねると、やっぱり役者は誰も笑わんくなって「これオモロイんかなあ?」って不安になってくるけど、蓋を開けるとめちゃくちゃ面白い劇になってるという。だからそこら辺は「天才がいるから大丈夫だ」と。

中川 いや、その感じ良くないからね(笑)。「自分がすごい」「自分が笑いを取ってる」って思うようにしないと。

台詞をパス回しする群像劇と、違う所に行こうとしている。

中川 「学校の怪談」みたいなことって、何か経験したことあります?

日下 怖いものは見たくないし、聞きたくない性格というのもあって、記憶にないですね。「トイレの花子さん」は世代的にドンピシャで、学校の前で映画の割引券が配られたりしてたけど、もらいもしなかったです(笑)。

金丸 怖いというより変な話ですけど、友達数人と運動場に向かう時に、二階の教室に津田という奴がいるのを見かけて「津田、はよ来いやー」って声をかけたら、その二秒後ぐらいに一階から津田が「おう、行く行く」ってトコトコ走って出てきたんですよ。で「お前二階におらんかった?」って聞いたら「いや、一階におったけど」って。

中川 こっち(金丸側)が全員見たの?

金丸 4・5人いたけど、全員二階にいたのを見てました。怖いというより、変な話です。

納谷 学校じゃないけど、富良野塾はいっぱい怪異がありましたよ。たとえば夜中のスタジオで、先輩と二人で話をしていたら、トイレの前にある3つの水道の蛇口が、一斉にジャー! と開いたとか、誰もいないはずの所から鼻歌が聞こえるとか。

日下 ホンマの奴じゃないですか(笑)。

納谷 あの地域の開拓って過酷だったから、結構人が亡くなってるんですよね。塾の敷地内にあった古い家を壊したら、夜逃げをする人が最後の恨みつらみを書き残していたのを発見したりもしました。

金丸 嫌な種類の怖さやなあ。

中川 僕は全然オカルトとか信じてないから、開かずの教室みたいな所に一人でバーっと入って、勇者みたいになったりしたなあ。大人になってからも、平将門の首塚を平気で触りに行ったりして。

納谷 マジで! 怖―!!

金丸 あれ、近寄っただけでも怪我したって話、結構聞きますけど、ようやりましたね。

中川 舞台の話に戻すけど、今回は今までと違うものができてるなあとすごく思う。台詞をパス回しする群像劇とは違う所に行こうとしてるし、それはゲストの皆さんにすごく助けていただいてるなあと思います。

日下 「オカルト」と銘打ってるけど、すごく笑えるオカルトですよね。私を含めて、みなさんのいろんな特技も出てくるので、いろいろ盛り沢山な舞台だと思います。

金丸 どコメディですよね。また「上田さんは天才やなあ」と思うんだろうなあ(笑)。

納谷 今まで客として観てきたヨーロッパ企画に、念願かなって出るということもあって、なるべくヨーロッパ企画に溶け込んでいる僕を、お客様には観ていただきたいなあと思います。あと僕は師匠(倉本聰)に「お前はコメディやるのは50年早い」と言われてたんですけど、札幌公演に呼んでみようかなあと、本気で思ってるんです。

金丸 うわぁ! そら観てもらった方がいいでしょうねえ、師匠なら。

納谷 この前初めて「(劇団☆)新感線」を観たそうで、何かピシャ! って言うかな? と思ったら「ああいう世界もあるんだな~!」って、テンション上がってて(一同笑)。割と感動したみたいだから、これも感動してくれるんじゃないかなあと思います。

文:吉永美和子

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