ギョエー!旧校舎の77不思議

  • 土佐 × 祷 × 亀島

::: 対談企画2 :::

土佐和成 × 祷キララ × 亀島一徳

TOSA KAZUNARI × INORI KIRARA × KAMESHIMA KAZUNORI

「20年目でこういうことができるのはカッコいい」と刺激に。

土佐 亀ちゃんは、ヨーロッパ企画は初めてよねえ。

亀島 本公演は初ですね。(ヨーロッパ企画内のユニット)「イエティ」や、(上田が脚本・演出した)『TOKYO HEAD』(2015年)には出てますけど。

土佐 (所属してる)「ロロ」の調子はどんな感じなん?

亀島 気づいたら10年経ってました。8年目9年目は、会議とかでちょっと皆がバチバチになったりして「ヤベえんじゃないか」と思ったんですけど、何とか全員の方向性や気持ちがある程度定まった上で、10周年を迎えられたかと。

土佐 僕らも10周年で苦しんだ記憶があるからなあ。まさにここ(栗東芸術文化会館さきら)で、祷さんと仲がいい松居(大悟)君が文芸助手で参加していて、そこ(楽屋横)のトイレで泣いたという(一同笑)。

 何があったんですか?

土佐 上田さんが全然書けない時に、松井君が用事で何日か東京に戻ってて。で、帰ってきたら台本がドワーっとできてたから「肝心な時に立ち会えなかった」って、自分への不甲斐なさから。

亀島 何かかわいいなあ(笑)。その時に「ああ、こういうので先輩たちはキツかったんだな」ってわかりました。先輩の劇団たちを見ても、やっぱり10周年ぐらいで解散する所が多いんですよ。最初は学生のノリの延長で、ただ自分たちが楽しいと思うものを作ってたけど、30代に入ると生活のことを考えなきゃならなくなる。僕らがギスギスしたのも、その辺の影響があったと思います。

土佐 で、そこを乗り越えて、新たな10年に。

亀島 行けそうだなあと思います。少なくとも僕は(笑)。それこそ昨年、ヨーロッパ企画さんの公演を観て、やっぱり20年目でこういう公演ができてるのがカッコいいなあと。僕らも自分たちらしい形で、20年を迎えられるチームになりたいという思いは、より強くなりました。

土佐 で、祷ちゃんは小学生の時に、女優デビューをしてるんよね。

 4年生の時ですね。柴田剛監督の『青空ポンチ』という映画に、両親が連れていってくれたのがきっかけでした。それを観た時「何かわからんけど、めっちゃ楽しい!」と思って、後で監督にお会いした時に「私も出てみたい」というようなことを言ったらしいんです。全然覚えてないんですけど(笑)。それを監督が面白がって「じゃあ、次の映画に出してあげるよ」って言われて、スクリーンデビューをしたのが『堀川中立売』(2010年)でした。

土佐 サラブレッドの香りしかしないなあ(笑)。

 その後も普通の公立の学校に行きながら、年に数本ぐらいお仕事をしてたんですけど、高校生の時に本当に何をしていいかわからなくなった時期があったんです。その時に芸能事務所から声をかけていただいて、今までやってきた女優という仕事を、もう少し深い所まで見てみようと思うようになって、昨年春に大阪から上京しました。舞台は昨年の『みみばしる』が初めてだったんですけど、二度目の舞台でヨーロッパ企画さんに出られるなんて、本当に実感が沸かなくて。稽古のエチュードの時も「そうか、ヨーロッパ企画さんの舞台に出られるんやなあ」と思いながらやってました(笑)。

自分の心のままにやって、あとは上田さんの力を借りる。

土佐 そのエチュードをやってる時って「これが本当にお芝居になるんかなあ?」と思ったやろうね。想像がつかんよね、多分。

 そうですね。全然つかなかったです。

土佐 でも今回のエチュードって、今できてる台本と、そんなに外れたことはやってなかったんとちゃうかなあ。結構最初から、今の形ができあがってたというか。77不思議のネタ自体は、上田さんがいっぱい準備していたから、エチュードでは割と人間関係をメインにやってたような気がする。

亀島 関係性を探る、みたいな感じでしたよね?

土佐 そうそう。生徒同士とか、先生同士の関係性を。ただその生徒の関係で気になってるのが、亀ちゃんも祷ちゃんも、どちらもイジメられっ子だったという。

亀島 キャラかぶり、ですね。与えられた設定がかぶってる。

土佐 そのすみ分けが、大変なんちゃうかなあと思って。それで僕、亀ちゃんのイジメられっ子設定はいらんのちゃう? って上田さんに相談しようと思いながら、もう二週間ぐらい経ってる(一同笑)。

亀島 でも「イジメられる」と言っても、大人しくてイジメられる人と、割と元気だけどイジメられる人がいると思うんです。それで言うと大人しい人は、だいたい声も小さいはずなので、出力が弱まってしまう。それってコメディとして成立させるのが難しいなあと思って、割と元気なバカという作り方をしました。台詞は与えられても、それをどう出力するかは僕に委ねられているので、僕なりにコメディになりやすい選択肢を取ったという感じです。

 その「出力が弱くなる」っていうのは、私も考えました。不登校になるぐらい、周りからイジメられたなら、怪異が起こってもあまり「怖い! 怖い!」って、みんなと一緒に騒げないだろうなあと。でも明るい方には、絶対につながらなかったです。自分の中で。

土佐 大人しくてイジメられる方に行ったんやね。

 でもそれって、映像では成立させることはできるけど、舞台ではどうすればいいんだろう? って悩んでた時に、上田さんからLINEで「稽古では、ここがいい感じですね」っていう内容の、長いメッセージが来たんです。その時に、上田さんはエチュードで、それぞれのシーンが面白くなる要素だけじゃなく、登場人物のキャラクターもちゃんと見てくれているんだ、と。だったらもうそれを信じて、まずは自分の心で感じたままにやってみて、それが舞台で成立するかどうかは、上田さんの力をお借りすればいいと思うようになりました。

土佐 でも今回は上田さんも、割とチャレンジしてるんじゃないかなあ。 イジメとか死なんかのネガティブなことって、あんまり今まで劇で扱ってなかったから。

亀島 そうですね。そういうイメージがない。

土佐 そんな要素をコメディに転じるというのは、あんまりやってきたことがなかった。だから出力の問題は、上田さんも正直迷ってると思う。だからもう、勝手にやったらいい(一同笑)。上田さん多分、まだ(今の段階では)明確な答がないやろうからね。

 それで言うと土佐さんの役も、結構特殊ですよね。

土佐 ちょっと役割が『(出てこようとしてる)トロンプルイユ』(2017年)の奴とかぶりそうやから、上田さんには「別の役がいい」って言ったけど、結局この役になってた(笑)。

長期ツアーは、先のことを考えずボーッとするのがコツ。

亀島 怪談の定番キャラですよね。僕の住んでた所って、そういう怪談がなかったんです。ニュータウンだったから、まだ歴史がない町で。学校も新しかったので、七不思議とかを背負う前の状態でしたね。今は年月が経ってるから、何か生まれてるかもしれないけど。

土佐 僕ね、一応学校では怪異を体験したことがある。中学の時にグラウンドで野球やっててんけど、先輩の試合で塁審をやってた時に、ふと校舎の方を見たら、校舎の上に真っ赤な隕石が降ってきて、後ろにドーン! と落ちて。

 ええっ!

土佐 でも別に校舎が壊れたとかもなく、その隕石も僕しか見てなかった。その絵はハッキリ覚えてるけど、今となっては「夢だったかなあ?」と、自分でもわからんくなってる。

 学校じゃないけど、UFOを見たことがあるんです。しかも二回(笑)。一回目は、母親とUSJのアトラクションに並んでる時に、空にV字飛行してる鳥の群れがいて。「飛んでるなー」と思いながら見てたら、その鳥の一部が一瞬で消えたんです。それで母親と一緒に「UFOちゃう?」って。それで二回目は、やはりUSJに行った時に……。

亀島 USJ結構行ってるねえ(笑)。

 それは夜の10時頃だったんですけど、退場ゲートに向かってる時に、何か空にクリーム色の、凹凸のない楕円形上のものが浮かんでたんです。その時も母が一緒で「風船にしてはおかしいなあ?」と思いながら、ずっと眼で追ってたら、それがゲートを抜けて、駅に続く通りまで飛んでって、気づいたら大きなホテルにぶつかりそうになって……。

土佐 あの辺って、結構人おるやんね? 誰も気づいてなかった?

 気づいてないんですよね。それがスルッと側面に沿って移動した時に、ようやく「写真撮ろう!」と思って携帯を出したら、どんどん小さくなってそのまま消えたんです。その後は、もしあれがUFOだったら、私たちがずっと見ていたことに気づいてるはずだから、抹殺されたらどうしよう? と思って、ずっと顔を伏せて過ごしてました。

土佐 でももう実は、さらわれてた後なんかもかもしれんよ。UFOって記憶消されるっていうから(笑)。そろそろ締めくくりたいけど、2人とも長期ツアーは初めて?

亀島 こんなにいろいろ全国に行くことはなかったので、その土地土地がすごく楽しみですね。やっぱり場所によって、反応って違ったりします?

土佐 違うっちゃ違うけど、一緒っちゃ一緒(一同笑)。公演によるんかな? 東京ではすごく盛り上がるとか、その逆もあったりとか。

 この前の舞台は東京と大阪だけだったんですけど、作品を届ける瞬間に立ち会えた東京と、地元の人たちと劇場で一緒に作品を進めていけた大阪とで、それぞれすごく幸せを感じたんです。今回は11ヶ所も行くので、そこでずっと時間を経てきた劇場や、その土地に親しんできた人たちと作品を通して出会えるのが、すごく楽しみです。

土佐 でも長期ツアーはね、そんなに気張りすぎず、できるだけボーッとするのが乗り切るコツやから。それと、あまり先のことを考えないようにする。

亀島 しんどくなっちゃうからですか?「あー、あと○回だ」って。

土佐 そうそう。残りのステージ数を計算しだしたらヤバイからね(一同笑)。

文:吉永美和子

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