出てこようとしてるトロンプルイユ

  • 酒井×菅原

::: 対談企画2 :::

酒井善史 × 菅原永二

SAKAI YOSHIFUMI × SUGAWARA EIJI

永二さんがいると、安心してふざけられるのが大きい。(酒井)

菅原 本公演に出るのは『(建てましにつぐ建てまし)ポルカ』から4年ぶりですね。今回は(岸田國士戯曲賞)受賞後第一作目ということですけど、作り方は今までと変わらないでしょ?

酒井 というか「受賞後にこれやるんや」って感じです(一同笑)。今までっぽいけど、今までとは全然違う仕掛けがあったりするんで。『ポルカ』の時もそうだったんですけど、こういう作品に永二さんがいると、だいぶ助かりますね。真ん中にドーンといてくださるので、ちょっと変なことを、群像やりながら試すみたいなことができるんで。

菅原 それは上ちゃん(上田誠)が、何か実験的なことをしたい時には僕を呼んでくれるのか、たまたまそこに僕が居合わせているのか、どっちなのかなあ?

酒井 どうでしょうねえ。多分「汲み取ってくれる人」というのは大きいと思いますよ。「こういうのがやりたいんです」と言った時に「わかった。じゃあこうやろう」ってすぐに受け入れて、一緒になって取り組んでくれますし、僕らも永二さんがいると安心してふざけられる。それは『TOKYOHEAD』(注:上田が作・演出、菅原&酒井が出演した舞台)でも、映像作品でもそうですね。

菅原 それで『ポルカ』の時は、僕は序盤からほぼ出ずっぱりだったから、実はあまり稽古を客観的に見れなかったのね。でも今回は稽古を見てる時間が結構あるんで、それが前回と違ってて新鮮だなあと。

酒井 永二さんが主役的な感じでしたからねえ。

菅原 だから僕にとっては、むしろ今回がヨーロッパ企画の王道に参加してるという感じ。僕の中でヨーロッパは、みんなが群像でワイワイやってくってイメージだから、それにかなり近い。

酒井 あー、確かに『ポルカ』は細切れというか、パーツパーツで見せる感じの作品でしたね。それで言うと今回は、永二さんも含めて途中からどんどん人が増えていく。

菅原 実はあまり群像劇の経験がなかったから、その点も新鮮です(笑)。と同時に、群像劇の難しさも感じていて、たとえば「みんながワーってなる」って(ト書きに)書いてあった時に、どこまで「ワー」って言えばいいんだろうって。他のみんなは「ワー」ってなっても、次誰かがしゃべる時にはきれいに止まる。その反応というか、会話の流れを損ねないようにするのが、ヨーロッパのみんなはすごく上手いよね。

酒井 それで言うと、僕そういうのが苦手なんで、最近はあまり群像に入れてもらえないんです(一同笑)。

菅原 あ、そういうことか! しかも台詞を一個間違えると、そのリズムが全部崩れるわけだし、すごいことやってるなあと思うよ。だから今回は僕もどんどん台詞を投げ合って、ちゃんと「ワー」を止めることができるかどうか、不安(笑)。

酒井 いやいや、全然大丈夫でしょう。

面白いシーンがあふれていて、短縮するのがもったいない。(菅原)

菅原 僕の役は、亡くなったアトリエの主と旧友の間柄だった画家。彼を偲ぶために、みんなが片付けている部屋にやって来るという。

酒井 今回永二さんは真ん中って感じじゃないですよね、役柄的に。割とふざける方というか。

菅原 そうだね。それで言うと酒井は……ねえ……(笑)。

酒井 ちょっと次元が違いますからね。でも全員にツッコまれて、あしらわれてを繰り返す、割とよくやっている役です。

菅原 酒井のシーンだけでも、やろうと思ったら30分はできるよね(笑)。今回は前半のやり取りだけでも、2時間ぐらい引っ張れるんじゃないかというぐらい、面白いシーンがあふれてる。短縮しちゃうのがもったいないぐらい。

酒井 ただ前回の『来てけつかるべき新世界』は割とポンポンというテンポでしたけど、今回は舞台がパリだからか、全体的にちょっとゆったりしてる印象があります。特に前半が。やっぱり『新世界』とは、毛色の違うやり取りをイメージしてるんじゃないかなと思いますね、上田さんは。

菅原 もうすぐ(プレビュー公演のある)栗東(の劇場)に入って、実際のセットが組み上がるわけでしょ? その時にはパリ感が、より出て来るんじゃないかと。

酒井 今回はいわゆる具象の、割と普通のセットなんですけど、ヨーロッパでは初めて一部が八百屋(注:床に傾斜が入っていること)になってます。

菅原 あ、初めて? 腰にくるのかなあ(笑)。でも実際に舞台に立ったら……稽古場だと立ち位置があまり厳密じゃないから「あ、このスペースも使えるんだ」というのが、多分栗東に入ってから出て来ると思う。取りあえず今は、(アトリエの)ベランダとかにいっぱい行く人になろうかと(笑)。

酒井 はあはあ、そんな目論見が。

菅原 今は登場人物がほぼ全員そろった辺りの稽古はよくやってるけど、序盤の僕が登場する所はそんなに(稽古を)やってないから。だから実際の舞台で、ちょっといろいろ試してみようかなと。動けるところを模索中です。

文:吉永美和子

  • 稽古場風景