金丸　僕は今回、セネガルからやって来た画家の役ですけど、（稽古で）京都に入ったその日ぐらいに石田さんから「金丸は黒人の役だよ」って言われて。その時は「イジられてんなー」と思ってたけど、本当にそうなりました（笑）。

本多　前回（『来てけつかるべき新世界』）の時、金丸は真っ黒に日焼けして（稽古初日に）来たから、その印象があったんかもわからんね。僕は画家の部屋を片付ける芸術家の一人やけど、最初は純朴な感じでってたんよ。でも「高飛車な方がいい」と言われて…。

金丸　今回みんなが使ってる「違うくてー」みたいな言い方、本多さんが最初に言い出しましたよね？

本多　あ、僕？ それは上田（誠）君に「（エチュードで）そう言って」って言われてやったんやと思うよ。

金丸　その時上田さん「発見した！」みたいに笑ってたんですよ。それ覚えてます。

本多　芸術家っぽい言い方が見つかった！ ってなったんか。

金丸　僕は初めて（『ビルのゲーツ』で）参加した時は「何か言っとかな、箸にも棒にもかからん」と思って、エチュードでとにかくボケまくろう、滑ってやろうと思ってたんですよ。でも（ゲスト出演）3回目になると一周回って、上田さんの意図をあまり汲み過ぎない方がいいかなあと思い始めました。

本多　あー、「取りあえず何か言おう」からその先に進んで。

金丸　やっぱりヨーロッパ企画には、20年近く皆で一緒にやって来た掛け合いの妙みたいなんがあるから、俺はそこでいい感じの違和感になれたらいいんやろうな、みたいな。ツッコむにせよイジられるにせよ、掛け合いがキレイに回っている所に、何かカカッ！ とさせるような。

本多　異物感みたいな。

金丸　そうそう。今回も木下（出）さんとか異物感すごいし（笑）、ゲストによって劇団の感じがちょっと変わるのが、重要なんやろうなと思います。

本多　それで言うと金丸は、割とツッコミ役が多いよね。昔は酒井（善史）がやってたけど、酒井がでけへんようになってきたから（一同笑）。

金丸　それ言いますよねえ。年取ったらツッコミやった人が、だんだんボケてくるって。

本多　そうそう。あとは僕らにはない野性味。それもかつては土佐（和成）さんが担ってたけど（笑）。そういう部分をやってくれるから、重宝されるんやろうなあ。

本多　金丸は稽古中に「（舞台の）真ん中に入ってきてくれ」ってすごい言われてるのに、全然下手（客席から見て舞台左側）から動かへんってことあったよね？

金丸　上田さん、キレてましたよねえ（笑）。

本多　あんだけ頑なに真ん中に入ってこないって、何かあるんかなー？ って。

金丸　自分の中で、真ん中に行く動機があまりなかったというのもありますけど、上田さんから「ツッコむ時は、下手におってほしい」みたいなことを、ずっと聞いていたのが大きかったと思います。上手でボケて下手でツッコむ方が、劇の重力としていいみたいなことを言ってたんで。

本多　あー、上田君は割と、その辺の位置関係を重視するよね。

金丸　「（ツッコミだから）じゃあ、下手にいようかなー」って、自分が勝手に考えるようになってきてたんでしょうね。さっきの「上田さんの意図をあまり汲み過ぎない」の話で言うと、ヨーロッパのやり方に慣れすぎたが故に、変な間を出してしまったらあかんなあと。それは今回、すごく思いました。

本多　で、先日プレビュー公演が終わったけど、何か今回の作品は情感みたいなんがすごくあるよね。前回の『来てけつ…』の人情劇パートみたいな。

金丸　あと割と最後の方にも、物語の構造の面白さがあるというか…終盤で「ええ！ そういうことやったん？」とか「じゃあ、これどこで話落とすの？」みたいなのがまだ残ってるから、何かいつもと違うお客さんの集中度があってラストを迎えた、って感じがしました。

本多　そんなんちゃんと感じてたんや。すごいな。

金丸　いや、勝手に肌感覚で感じただけですけど（笑）。いつものヨーロッパって、尻上がりに笑いの量がどんどん増える感じがするけど、今回は「この後、何かがきっとある」という緊張で、最後までお客さんを引っ張るような舞台になったんじゃないですかね？

本多　そういう点で、ホラーっぽいと思う人もいるんちゃうかな。これから始まるツアーでは、面白い所は面白く、それ以外の情感を出せる所はもっと出せるようにしたいなあ。

金丸　俺はただただ、喉が万全の調子でステージをやりたいですね。他の人にはわからんけど、実は喉の調子が2％だけ落ちてるって、自分だけ嫌ですやん？

本多　あー、嫌。一番楽しくないよね。

金丸　常に自分の完ぺきな音が出せるようにという、それに付きます。

本多　じゃあ僕は、その完ぺきな音との違いを見つけるのを楽しみに（笑）。

金丸　あー、エグい！ やっぱ悪い人やわあ（笑）。